また安定を求めるの? 妊娠を機に再びチャレンジ

 前田さんがブリキのジョーロを辞めたのは、結婚した翌年に妊娠したことがきっかけだった。「大好きなお店だったんですが、フラワーショップの仕事は、立ち仕事が基本。水の入った重いバケツなどを運ぶこともできなくなり、このままお店で働き続けることは難しいと思ったんです」

 オーナーからは、「一時的に事務作業に切り替えて仕事を続けてほしい」という提案を受けたが、前田さんはあえてフリーランスのフラワーアーティストとして活動することを選んだ。

 「本当にありがたい提案で、すごく気持ちが揺れました。大好きなお店で仕事を続けていれば、安定した生活が送れる。そのほうが賢明な判断だと、頭では分かっていたからです。でも、『ここで安定を求めたら、今までの生き方と同じ。だったらアナウンサーのままでいれば良かったよね?』と思って、チャレンジするほうを選んだんです」

 前田さんはテレビ局を退社するときに、「ワクワクするほうを選ぶと、幸せな体験と素晴らしい出会いが増える」という成功体験を積んだ。だから再び訪れた転機の際にも、手堅い道ではなく、自分の好奇心がくすぐられるフリーランスの道を選ぼうと思った。

 そして「フラワーアーティストとしての歩みを止めたくない」という気持ちも相まって、店を辞めた翌週には税務署に個人事業主の届け出を提出。出産後は育児と並行して、フリーランスのフラワーアーティストとして活動した。

好奇心がくすぐられ、ワクワクするほうを選ぶ