不妊治療専門クリニックの医師・月花瑶子先生が妊活を基本から分かりやすく教えてくれる日経doors妊活アカデミー。第5回は、「なかなか妊娠しないとき」に活用する生殖医療、不妊治療の基礎知識。菅義偉首相は少子化対策の柱として、不妊治療による経済的負担の軽減方針を強調し、大きな注目を集めています。不妊治療とは一体どんなことを行う治療で、どのような流れで進んでいくのでしょうか。病院の選び方、働きながらの不妊治療のポイントについて月花先生が解説します。

20代後半 「半年妊娠しない」が受診の目安

 国立社会保障・人口問題研究所の調査では、世の中の夫婦の35%は「なかなか子どもができず、不妊の心配をしたことがある」というデータが出ています。実際に、不妊治療および検査を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は、全体で18.2%。これは世の中のカップルの5.5組に1組に当たります(※)。

 日本産科婦人科学会は、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものを「不妊」と定義しています。一定期間とは「1年」が一般的であるとしていますが、加齢により妊娠率が低下することを考えると、1年を待たずに検査や治療に踏み切ったほうが妊娠の確率は高まると言えるでしょう。

 最も妊娠しやすい排卵日前にタイミングを取った場合、20代後半の妊娠率は20~40%なので、6カ月ほどたっても妊娠しないなら、不妊原因の有無を調べてもいいかもしれません。30代ではさらに妊娠率が低くなるので、6カ月では妊娠に至らないこともありますが、妊娠できるタイムリミットも迫ってくるので、次のステップに進むタイミングは、できるだけ早いほうがいいでしょう

 不妊治療によって生まれてくる子どもはどれくらいいるのでしょうか。下記は、不妊治療のうち体外受精による出産数のグラフです。

 2018年に高度生殖医療(体外受精)で生まれた子どもは5万6979人。これは出生児数全体の16.1人に1人、つまり約6%の割合です。この数字を見ると、不妊治療が決して特別なものではなく、身近な治療であるということがお分かりいただけると思います。

 不妊治療とは具体的にどんなことをするのか解説していきましょう。