「スキルや経験」が影響を与えるのは自分だけ、だから納得して積み上げられる

――「キャリア」という言葉の中には、「スキルや経験」という意味と、「立場や役職」といった意味の両方が含まれていますよね。皆さんが積み上げていきたいのは、「スキルや経験」ですか? それとも「立場や役職」ですか?

ハヤカワ 「スキルや経験」を積み上げていきたいですね。なぜなら会社内での「立場や役職」は、影響されるものが多いと思うんです。そのときの環境や状況、人間関係などがどう作用するかによって、結果が大きく変わってくる。でも「スキルや経験」の場合、影響を与えるものは「自分」だけ。だから比較的どういう状況であっても、納得しながら自分らしく積み上げていけると思うんです。

藤岡 私も「立場や役職」ではなく、「スキルや経験」を積んでいきたいですね。日本は海外と比べると、ベンチャー企業に投資家が付きづらく、ビジネスのスピード感もゆっくりしています。せっかく優れたビジネスを打ち出しているのに、それが社会に広がらないのはもったいない。だから経理や財務のスキルを生かして、若手起業家やベンチャー企業の支援をしていきたいと思っています。

スキルや経験を積み重ね、経理や財務の領域で若手起業家、ベンチャー企業を支援したいです(藤岡さん)
スキルや経験を積み重ね、経理や財務の領域で若手起業家、ベンチャー企業を支援したいです(藤岡さん)

エバンズ 私もお二人と同じです。「スキルや経験」を積むことによって、人や自然、社会や地球のためになる仕事をしていきたいです。私は、人と人とをつなげたり、誰かと一緒に何かを形にしたりしていくことが得意だと思っているので、人が持っている優しさや思いやりの心をつなげることで、すべてが循環しながら続いていく社会を目指していきたいと思っています。

ハヤカワ 私はこれまでの経験から、人を巻き込んでプロジェクトをスタートさせたり、コンセプトを作ったりすることが得意だと思っています。でも、それが自分のスキルなのか偶然うまくいったのかは、1度試しただけでは分かりません。だから今年は、0から1を生み出すことが、本当に自分のスキルなのかを検証していく年にしたいと思っています。

仕事=ツライではない、大変だけど楽しいもの

――「バリキャリ」や「ゆるキャリ」など、女性のキャリアを表す言葉は必要だと思いますか?

ハヤカワ 名前がついていると、参考になる人もいると思います。自分の働き方を考えるときに、見本があると目指しやすいですよね。だから、言葉があること自体は悪いことだと思いません。むしろ良いことだと思うんですが、「バリキャリ」という言葉はネガティブなイメージが強くなっているので、別の良い表現があればいいなと感じています。

藤岡 「ゆるキャリ」も、ネガティブな文脈で語られることが多くなっていますよね。本来は「プライベートも充実させながらマイペースに働く」というポジティブな意味が強かったと思うのですが、次第に「仕事よりもプライベートを重視する」という意味が強くなってきたように思います。

エバンズ どちらの言葉も、ネガティブなイメージで語られがちになっていますね。

ハヤカワ プライベートも大事にしつつ、仕事もバリバリする女性はたくさんいるので、「プライベートを重視しているからゆるキャリだね」と言われると、当てはまらない人も多いと思います。

 それに今は、「キャリアウーマン」という言葉自体にもなじみがなくなってきたように思います。女性が社会に出て働くことはもう珍しくないですし、男女共にキャリアを考えることは大切ですしね。

――周囲からは、「どういう働き方をしている人」だと認識されたいですか?

ハヤカワ 私は達成したいミッションがあって働いているので、それを純粋に追い求めている人だと思われたいです。お金のため、生活のために無理をして働いているのではなく、自分の人生で「実現したい」と思っていることに対する、アウトプットとして仕事をしています

 もちろん大変なことはありますが、だからといってつらいわけではありません。バリキャリという言葉には、「無理をして頑張っている」という印象があるかもしれませんが、「大変だけど楽しい」という働き方もある。だから、頑張って働いていることをポジティブなイメージで見てもらえるとうれしいですね。

エバンズ 私もお金のために働いているわけではなく、お世話になっている方に恩返しをしたくて仕事をしています。だから、社会や人に貢献できるような人でありたいし、そのために働いていきたいです。

 楽しんで働いているけど、ラクをしているわけではない。大変なこともひっくるめて、楽しみながら働いている。そんなふうに見てもらえたらうれしいです。

大変なこともひっくるめて、楽しみながら働いている。社会や人に貢献できるような人でありたいし、そのために働いていきたいですね(エバンズさん)
大変なこともひっくるめて、楽しみながら働いている。社会や人に貢献できるような人でありたいし、そのために働いていきたいですね(エバンズさん)

藤岡 私もお二人と同じですね。「楽しんで働いている人だな」と思ってもらえるとうれしいです。無理をして働いている印象を人に与えると、見ている側も苦しいと思うので、仕事も楽しいし、子育ても楽しい。そう思われるような働き方をしていきたいと思っています。

<本日のまとめ>
●「バリキャリ」は文脈次第。言葉が持つイメージは時代と共に変化する。ただし、ネガティブな文脈で使われると違和感あり
●積み上げていくべきものは「立場や役職」よりも「スキルや経験」! 影響を与えるものは自分だけなので、納得しながら経験を積める
●「仕事=ツライ」ではない。人生で「実現したい」と思うことに対するアウトプットとして仕事をする意識を持ってみよう

 今回は、3人の「バリキャリ」という言葉に対するイメージから、キャリア観を聞きました。特に、ハヤカワさんが語っていた「スキルや経験の場合、影響を与えるものは自分だけ」という言葉が、印象的でした。「自分らしく、納得のいくスキルを磨くことの大切さ」を改めて実感させられた方も多いのではないでしょうか。

 次回は、仕事とプライベートとの両立について語り合います。

取材・文/青野梢 写真/吉澤咲子 構成/浜田寛子(日経doors編集部)