経験や体験に自己投資、興味があることを選択していく

――普段、意識して自己投資していることはありますか?

エバンズ 物質的なものよりも、経験にお金を使うようにしています。旅に出て違う国の文化に触れることも経験ですし、興味のあるイベントや講演会などに足を運んだりもしています。

 物質的なもの、例えば服を買うときにも、「安いから」という理由だけで買うことはありません。尊敬している方が作った服などを買って、自分にとってストーリー性のあるものを身に着けるようにしています。そうすることで、自分の気持ちも豊かになるし、人とのつながりも増やしていける。それが、私にとっての自己投資になっていると思います。

ハヤカワ 私も自分がいいなと思ったものや、各業界で評価されているものに対しては、しっかりとお金を払って体験するようにしています。アートでも本でも食事でも商品でも、どんなところが評価されているのかを、自分で確かめることが大切だと思っています

 今の自分のレベルが最高100だったとしても、見識を広めて最高レベルを上げていけば、仕事のアウトプットでもより質の高いものが出せる。「どれくらいクオリティーが高いのか」という認識を正確に持つためにも、「知ること」になるべく投資するようにしています。

藤岡 私は結婚する前と後で、自己投資の仕方が少し変わりました。結婚前は、興味のあるセミナーや講演会などに「参加して学ぶ」ことが多かったのですが、今は子育てもあり時間を確保することが難しいので、「書籍から学ぶ」ことが多くなりました。

 結婚前後で変わらないのは、神社など歴史に触れられる場所に行くことですね。「その場所に行って自分で感じる」という時間を持つと、人としての幅が広がる気がしています。それは巡り巡って、仕事にもつながることなのかな、と。

エバンズ そうですね。食べ物も衣服も行動も、自分が選んでいるものはすべてがつながっていると思います。だから、日ごろから自分のメンテナンスをしっかりすることを意識するようになりました。

――いつから経験や体験に自己投資するようになりましたか?

エバンズ はっきりとした時期は分からないんですが、興味を持っていることを学びたいと思って行動していたら、次につながっていました。

 フェアトレードの勉強をしていたらエシカルに出合い、エシカルの講座に通い始めたら、今につながる人たちと出会って……というふうに。そうした経験を振り返ったときに「学んでよかった」と思えたので、その後はもう少し意識的に、「ここに行けばもっと知識も世界も広がるかも」と考えるようになりました。

藤岡 その都度、自分に合うものや興味を持てるものを選んでいったら、今にたどりついたという感じですよね。私も事務の仕事をしていたときに、「経理や簿記って楽しそうだな」と思って専門学校に通い始めたら、数年後には経営に参画したり、会社を立ち上げたりしていました。

ハヤカワ 私も自己投資するようになった明確な時期は分からないんですが、会社をやり始めて、「投資をしないと返ってくるものもないんだな」と感じたことが大きいです。私には特別な才能がないので、だからこそ最初に投資をしないと何も増えていかない。先に投資をして、それが後でいくらか戻ってくればいいと考えています。

「その都度、興味があるものを学んでいったら、今のキャリアにつながりました」(藤岡さん)/「私は、会社を始めてから『投資しないと返ってくるものがない』と実感しましたね」(ハヤカワさん)
「その都度、興味があるものを学んでいったら、今のキャリアにつながりました」(藤岡さん)/「私は、会社を始めてから『投資しないと返ってくるものがない』と実感しましたね」(ハヤカワさん)

 男性と女性――。性差によって働き方や考え方が異なることは、仕方がありません。ですが、ハヤカワさんが指摘していたように、感情論ではなく「既存の仕組み自体を疑ってみる」ことは大切。知らず知らずのうちに持っている先入観を捨てることが、男女の違いを受け入れ、一人ひとりが働きやすい社会を作るための第一歩かもしれませんね。

取材・文/青野梢 写真/吉澤咲子 構成/浜田寛子(日経doors編集部)