ウツワ代表のハヤカワ五味さん、フリーランスのエシカルコーディネーター・エバンズ亜莉沙さん、テーブルクロスの取締役CFO(最高財務責任者)・藤岡清香さんの3人に、キャリアや仕事観を語ってもらう本連載。対談3回目は、男女の働き方の違いや、自己投資について語ってもらいました。

ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)
ウツワ代表取締役社長。1995生まれ、東京出身。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。大学入学直後にワンピースブランド「GOMI HAYAKAWA」、2014年にランジェリーブランド「feast」、17年にワンピースブランド「ダブルチャカ」を立ち上げる。2019年5月に立ち上げた生理用品プロジェクト「illuminate」が話題に。
エバンズ亜莉沙(えばんず・ありさ)
1994年生まれ。フリーランスでイベント運営などのディレクターやエシカルコーディネーターとして活動。学生時代に約5年間米国オレゴン州で暮らしたことをきっかけに、環境や世界の抱える問題への疑問や興味を持つ。帰国後、「フェアトレードコンシェルジュ認証」取得。同時期に、国際NGOにてインターン、通訳としての地球一周を経験し、多様な環境や文化に触れる。現在は「サステイナブル」や「エシカル」というキーワードを軸に、イベントの企画やディレクション、ウェブメディアのディレクターやコーディネーターなどを行う。
藤岡清香(ふじおか・さやか)
テーブルクロス取締役CFO(最高財務責任者)。1児の母。24歳までフリーランスで音楽活動を行う。26歳でITベンチャー企業に経理として入社。その後、経営企画などの業務も担当する。29歳の頃にITベンチャー企業を設立し、取締役CFO(最高財務責任者)就任。商工会議所などで会計セミナーや、赤字企業への会計コンサルティングを担当。35歳で出産に伴い、退任。2018年より現職。
左からハヤカワ五味さん、エバンズ亜莉沙さん、藤岡清香さん
左からハヤカワ五味さん、エバンズ亜莉沙さん、藤岡清香さん

休職・育休を取るのが困難な社会

――藤岡さんは、現在 子育てをしながら働いています。出産前後は仕事をお休みした期間もあると思いますが、そのときに印象に残っていることはありますか?

藤岡 私は夫に育休を取ってもらったのですが、そのときにちょうど、子どもの「パパ見知り」が始まって。夫だと泣いてしまう状態が続いたので、自分が子どもを抱っこしながら仕事をしていました。このときは、せっかく男性に休む態勢を整えてもらっても、こういうことが起きるんだと勉強になりましたね。

 また男性の育休は、制度的にも心理的にも、まだまだ取得しづらいと感じました。自由な働き方が認められていそうなベンチャー企業でも、男性の育休は取りづらいという話をよく聞きます。むしろ大企業のほうが、男性の育休制度が整っている印象があります。

ハヤカワ 確かにベンチャー企業は、何よりも仕事で成果を出すことを重視している感じですよね。

藤岡 社会も変わろうとはしていますが、「とにかく仕事で成果を!」という環境だと、男性も取りづらいですよね。そもそも「育休を取りたい」と発言すること自体に、すごくプレッシャーを感じてしまう。

エバンズ 男性は、「有休も取りづらい」という話も聞きますね。育休や有休を取ったからといって、その人が仕事をおろそかにしているわけではないのに、周囲の反応を考えるとちゅうちょしてしまう。

ハヤカワ 男性の場合は、働くことが得意ではない人もいるはずなのに、仕事以外の選択をしづらいという課題もありますよね。

藤岡 一方で、女性は産休や育休で仕事を休むことにはなるので、仕事への影響を不安視されることがあります

ハヤカワ 女性が出産後に育休を取ったり退職したりするのは、母親としての役割や喜びに目覚めたというよりも、一般的に男性の方が給料が高いため、夫が働くほうが合理的だからだと思うんです。性別ではなく合理性の問題なのに、その点が度外視されていることが多いので、出産が理由で女性の選択肢が狭まるのは悲しいですね

 あとは、女性経営者の場合だと、資金調達のタイミングで「結婚や子どもの予定は?」と聞かれることもあります。

藤岡 私も資金調達をするときに聞かれたことがあります。ただ、私は自分が出産したことで、「産休を取っても事業を成功させられる」という実績を作れました。だから、もしまた同じ状況になっても、「経験してるので大丈夫です」と言える。成功事例を周囲に語れるようになったので、産休を経て職場復帰できてよかったです。

ハヤカワ 男女の働き方や考え方の違いは、どちらが損か得かという感情論で話し出すと、一生食い違ったままですよね。それよりも、まずは一度既存のフレームを疑って、「この仕組みってコレでいいんだっけ?」と考えるところから、変化が始まると思っています

 既に自覚している性差だけでなく、私たちの周りには「自覚していない性差」もあります。例えば、女子高だと文系・理系の数は半々か、理系の方が多いこともあるのに、共学では文系が圧倒的に多い。これは、共学だと「女性は数学ができない」というバイアスがかかるからだと言われています。

「『自覚していない性差』に気が付くことも大切だと思います」
「『自覚していない性差』に気が付くことも大切だと思います」

 こうした「自覚のないバイアスがある」ということを、まずは認めることが大切ですよね。男性も女性も、普段は意識していないだけで、知らない間に先入観を持っている。だから、「本当にコレを当たり前として受け入れていいの?」と考えて、自覚のないバイアスに気づいていくことが、性差を縮めていく第一歩だと思います。