前編はAIがますます発達し、仕事や会社そのものが変化していくということを伺いました。後編では環境がめまぐるしく変化する中でも、ずっと必要とされ、稼ぎ続けるためにはどんな力が必要になのか、教えてもらいました。

最初の仕事は「事故」みたいなもの、ベストチョイスかは分からない

日経doors編集部(以下、――) 前回のお話ではAIやテクノロジーによって仕事や会社そのものが変化する可能性が高いということを伺いました。激しく社会が変化する中で、必要とされる人材になり、稼ぎ続けられる力を保つにはどうすればいいのでしょうか。

藤原和博さん(以下、藤原) まず、今後社会がどのように変化するかは、本当に予想ができません。今の世の中の状況も、40年前には誰が想像できたでしょうか。私は40年前、リクルートに入社しましたが、リクルートが現在のように情報サービスを提供し、2兆円規模の会社になるとは全く想像できませんでした。

 前回もお話しましたが、AIやテクノロジーの発達によって、これまで以上に変化のスピードは加速していきます。それを今の時点で、どの会社に入るのがベストチョイスなのかは誰も分かりません。

 ただ、1つだけ言えるのは、「風通しのいい会社」「早いうちからバッターボックスに立たせてくれそうな会社、つまり、機会を与えてくれそうな会社」を選ぶことが重要だと思います。スポーツだっていつまでも控えの選手ではなかなかうまくならない。試合で成長するものです。会社員も同じで、重要な現場に投入してくれたり、主要な顧客を担当させてくれたりと「本番の勝負」をやらせてくれる会社かどうかを重視してください。

「1つの会社、1つのキャリアだけでは、経済的にも精神的にも幸福感は増殖しない」という
「1つの会社、1つのキャリアだけでは、経済的にも精神的にも幸福感は増殖しない」という

―― 風通しが良いかどうか、成長機会を与えてくれるかどうかといったことは、その会社の説明会や採用面接などで分かるものでしょうか。

藤原 会社の人と話していれば何となく分かるもしれません。ただ、最初の会社は『事故』みたいなもの。多くの人はいろいろな縁が重なって、偶然の要素によって入社しています。だから自分が選んだ会社が最良の選択だったと後から言えるように覚悟して取り組む必要があると思います。もちろん、予想以上のブラックな会社だったとしたら、すぐに辞めるべきですが、自分が選んで「ここで頑張りたい」と思ったら、まずはそれに取り組んでみる。ベストチョイスにしてやろうという思いが必要です

 ただし、この変化のめまぐるしい時代で、1つの会社で1つの仕事だけを続けていればいいというわけではありません。昔だったら20代から30代で山を築き、40代から50代は流して仕事をして、60代になったら引退するという、いわば「富士山型一山主義」だった。しかし、今はそれでは生きていけない。技術の進歩も目覚ましい中、1つの軸で稼ごうとするのは心もとない話です。つまり、人生100年時代が到来し、かつては引退していた60代から数えてもあと40年あるんです。1つのキャリアだけでは経済的に破綻するし、精神的にも幸福感は増殖しない