炭酸で割るだけで、本格的なレモンサワーが作れるサントリーのリキュール「こだわり酒場のレモンサワーの素」。お酒好きなら誰でも知っているレモンサワーという定番ドリンクながら、自宅で割って作るという新しいスタイルと、レモンサワーとしてのおいしさを追求した味で市場を席捲。当初の計画の10倍以上のヒットを記録した。商品の開発を主導したのが、サントリースピリッツRTD・LS事業部事業開発部の永尾真紀さん。新商品開発のきっかけから、異例の人気商品を生み出すまでのストーリーを聞いた。

(上)サントリー レモンサワーの素 計画10倍超の大ヒット ←今回はここ
(下)サントリーの大ヒットレモンサワー おじさん以外も虜に

 サントリーから2018年に発売された、炭酸で割るだけで本格的なレモンサワーが作れるリキュール、「こだわり酒場のレモンサワーの素」が人気だ。当初の年間販売計画だった3万ケースを大きく上回り、2018年には予定の10倍以上となる38万ケース(1ケース=500ml×12本換算)を発売。2019年には年間60万ケースを超え、さらに派生商品の缶入りタイプも当初計画の5倍近くの978万ケース(1ケース=250ml×24本換算)を販売した。

ありそうでなかった家庭向けレモンサワー商品

 商品を開発したのは果実酒などのカクテルベースやリキュール類の開発に携わってきた永尾真紀さん。開発のきっかけは、盛り上がりを見せるレモンサワーブームと、飲料の分野で起こっていた変化だったという。

<ヒットを生み出したワケ>家庭向けのレモンサワー商品という競合が少ないジャンルに商品を投入/炭酸水市場の伸びを考慮し、「割って作る」スタイルを提案/200軒の居酒屋をまわりレモンサワーのおいしさを探求/居酒屋好きに響く武骨なデザインと分かりやすいネーミング/サントリースピリッツ/永尾真紀さん(28歳)

 「飲食店でレモンサワーがはやっていると聞き、その内実を知るためお客様にヒアリングしたところ、若い世代だけでなく、40~50代の男性も愛飲していることが分かりました。どんな食事にも合うし、男女問わず注文しやすい。その価値にお客様が気付いていた。ただその一方で家庭向けのレモンサワー商品がほとんどなかった。ここに大きな可能性があると感じました

家庭向けのレモンサワー商品という競合が少ないジャンルに商品を投入

 さらに永尾さんが目を付けたのが、炭酸水の売り上げ拡大。自宅に無糖の炭酸水をストックして、ハイボールや焼酎を割って楽しんでいる人が増えていた。それならば、炭酸水で割るだけでおいしいレモンサワーが作れたら喜んでもらえるのでは?とイメージした。

 2017年、炭酸水で割って作れる「瓶のリキュール」タイプで発売しようと決まると、味の開発にとりかかった。メインターゲットは、居酒屋で食事を楽しみたい30~60代の男性。「仕事柄、よく居酒屋さんに出向くのですが、見かけたのが仕事帰りにちらっと店の中をのぞきつつも、諦めて家に帰っていく男性。そういう方は、自宅で飲んでいる。居酒屋で飲んでいるような雰囲気と味に、需要があると感じました」と永尾さんは言う。

炭酸水市場の伸びを考慮し、「割って作る」スタイルを提案