お湯をかけて食べるインスタント麺でもない、チルド売り場にある生麺でもない。揚げ麺と調味料のセット「パリパリ無限シリーズ」が大ヒットしている。「野菜がおいしく、たくさん食べられる!」というこのアイテムは、テレビCMなどの大規模な訴求をしていないにも関わらず、揚げ麺の市場を倍増させるほどの売れ行きだ。今までにない新しいこの商品は、どんな発想で生まれたのだろうか。ヒットの秘密を、商品開発を担当した東洋水産低温食品部チルド企画課、澤田舞夕さんに聞いた。

(上)異例のヒット「マルちゃんパリパリ無限シリーズ」 野菜嫌いが生んだ野菜がたくさん食べられる味 ←今回はここ
(下)「パリパリ無限」売れ過ぎて緊急休売 地道においしさ訴える

初めての商品開発で生んだ大ヒット

 野菜をおいしく食べられると人気の東洋水産の「パリパリ無限シリーズ」が注目を浴びている。野菜を1種類用意すればおかずが1品作れる便利でおいしい商品だ。パッケージに含まれる皿うどんのような揚げ麺と特製油、粉末スープを、キャベツの千切りなどの野菜と混ぜ合わせるだけでできあがる。サラダやおつまみとして幅広い世代から支持され、2018年2月の発売から2019年12月までで1500万食を突破。2020年初夏には2000万食に到達する勢いだ。揚げ麺の市場を倍増させた。

<ヒットを生み出したワケ>1野菜嫌いの視点で考えた「野菜をたくさん食べる」というシンプルな目的/2生野菜を混ぜるだけで作れる簡単さ/3何度も口に運びたくなる「やみつき感」にこだわった味付け/4社内では前例にない「無限」というネーミングとわかりやすいパッケージ

 開発を手がけたのは、入社11年目の澤田舞夕さん(さわだまゆさん・33歳)。新卒で入社後は8年間経理を担当し、9年目に、焼そばやラーメンなどの要冷蔵の商品を開発する、チルド企画課に配属された。当時チルド企画課では、災害の影響などから常温商品の開発に取り組もうという動きがあり、澤田さんは上司から、「揚げ麺を使って、何か商品を開発してくれ」と指示を受けたという。そして初めての商品開発の仕事として取り組んだのがパリパリ無限シリーズだった。