「甘さ控えめ」ではなく「甘くない」を明記
ボトルや商品訴求における甘みの表現にもこだわった。「甘さを伝える言葉を決める上でも多くの調査をしました。『甘さひかえめ』や『ほのかに甘い』という候補もあったのですが、午後の紅茶のイメージから、『甘さひかえめ』でもやっぱり甘いんでしょ? と思われる傾向がありました」と加藤さん。調査で、ザ・マイスターズを「甘さひかえめ」と伝えて飲んでもらうと、想像より甘くなくて驚かれることも多かったという。調査と検討の結果、「甘くない・微糖」が、言葉に対する期待値と実際の味覚と近いと分かり、この表現をボトル上にも採用した。
新ボトルを急ピッチで開発
通常の500mlペットボトルより背の低い形状の容器も、ザ・マイスターズの特徴だ。新しいボトルを作るためには投資も必要。さらに、通常のリードタイムより短い期間で容器を開発しなければならなかったが、加藤さんは実現するために社内を説得した。「午後の紅茶は定番商品でよく知られているからこそ、紅茶をよく飲む方でなければ、500mlの紅茶飲料の棚には目が行きません。当時は背丈の低いボトルに入ったコーヒー飲料が全盛期で、棚が活性化されていました。紅茶を飲まない方や、しばらく紅茶から離れている方の目にも触れるように、通常の午後の紅茶とは違う形状のボトルで、この棚に切り込んでいこうと考えました」
ボトルのデザインは、ステンドグラスのようなモザイク柄をあしらった案を採用。決定まで繰り返しデザインを練り直し、その候補の数は「思い出せないくらい」と加藤さんは笑う。さまざまな方向性を検討した末に、ステンドグラスのような上品でかわいらしさもあるこのデザインに満場一致で決定した。「紅茶缶をモチーフにした看板に商品名を入れるデザインにもこだわりました。ザ・マイスターズを定番として育てていきたいという思いもあったので、商品名と色を変えてシリーズ展開しやすいデザインも採用の決め手でした」と加藤さんは振り返る。
2019年3月、「午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」が発売。毎年のように季節商品や新商品が登場してきた午後の紅茶ブランドで、10年ぶりのヒットを記録した。その後のヒット継続の理由は、後編にて。
取材・文/川辺美希 写真/花井智子