麦芽量を保ちつつ糖質ゼロを実現する苦労

 発泡酒や新ジャンルでは既に、糖質ゼロの商品は多くラインアップされている。ただ、発泡酒や新ジャンルよりも麦を多く使用するビールでは、糖質ゼロを実現するのはかなり難しいと稲垣さんは言う。例えば、同じサントリーのビールである「ザ・モルツ」の場合、糖質は100ml当たり3.3gある。

 「酒税法で、ビールは麦芽を50%以上使うことを決められています。麦芽の量が多いと当然糖質も多くなります。薄めれば糖質ゼロには近づきますが、味が物足りなくなり、アルコール度数も落ちます。しっかり麦の味が味わえて満足感がある飲みごたえと糖質ゼロを両立するのが難しく、開発に5年がかかりました

 商品化までには試行錯誤を繰り返し、試験醸造の回数は異例ともいえる300回以上に及んだという。

「アルコール度数5.5%のビールで、おいしさと糖質ゼロの両方を実現するのは、試行錯誤の繰り返しでした」
「アルコール度数5.5%のビールで、おいしさと糖質ゼロの両方を実現するのは、試行錯誤の繰り返しでした」

ビール好きを満足させる味を追求

 糖質ゼロを実現すると同時に、とにかく味にこだわったと稲垣さんは言う。その背景にあったのは、ビール好きなユーザーが持つ潜在意識だ。

 「パーフェクトサントリービールの想定顧客は、すべてのビール好きの方。普段からビールを好んで飲むからこそ、ビールの糖質が気になるという人です。ビール好きな方は、発泡酒や新ジャンルも飲んでいるけれど、ビールだけが限られた原材料や製法でつくられている本物で、味わいもしっかりとしておいしい』という意識を持っていることが調査から分かりました。だからこそ、ビールで糖質ゼロだということに価値があると信じて、その味にこだわって開発を続けました

 開発中もユーザーへの調査を重ね、その評価を商品に反映した。改良を重ねて、2019年には顧客に提供できるレベルの味が実現できたとして、一部の飲食店において樽生の糖質ゼロビールをテスト販売。味への評価は十分に高かったが、さらなるおいしさにこだわって改良を続けた。