さまざまな人が関わる新商品開発 チーム力を上げる工夫

 2010年入社の稲垣さんはこれまで、ノンアルコール飲料や新ジャンルなどの商品開発やマーケティングを担当してきた。2度目の育児休業から復職するタイミングで、パーフェクトサントリービールのブランドマネージャーに着任。過去に商品開発を手掛けた経験から身に付いたユーザーの潜在的ニーズを読み取るノウハウや、機能系商品の訴求方法などを、今回のマーケティングにも役立てたという。

 商品に関わるさまざまな関係部署をまとめ、ブランドを引っ張っていく立場として意識しているのは、「相手への敬意と、自分の意思を持つこと」と稲垣さん。

 「1つのブランド、製品というのは醸造家やデザイナー、宣伝、広報など多くの専門家の力で成り立っていますので、チームメンバーに対する敬意は常に持っていますね。一方で、さまざまな部門のこだわりの間で板挟みになることもあります。調整する立場になったとき、大切なのは自分の意思を強く持つこと。その上で粘り強く気持ちを伝えていくことで、納得してもらえることは多いんです」

 稲垣さんは、「商品のことを一番考えて前に進めていくのがブランドマネージャーの役割」だと言う。「ブランドの真ん中にいる人間として、誰よりも商品のことを考える存在であることは意識していますね」

 開発に関わる社員たちの年代や、セクションごとの文化もさまざまだ。開発チームをまとめる中で、それぞれの人材に合ったコミュニケーションも意識している。

 「相談の仕方も、相手によってコミュニケーションを変えています。この人はここまで規定した上で相談したほうが仕事を進めやすいタイプだとか、この人は、抽象的な議論の段階から一緒にディスカッションしたほうがアイデアの幅を狭めなくていいなど、その人に合った密なコミュニケーションを心掛けていますが、まだ精進中です」


 続く後編「2500万本売れたサントリーのビール 1万人の声拡散」では、SNSや宣伝など、パーフェクトサントリービールのヒットを持続させた理由を紹介していく。

文/川辺美希 取材・構成/加藤京子(日経xwoman doors) 写真/鈴木愛子