目の前の仕事をやり続けた結果の抜てき

 「私は2015年に新卒でサイバーエージェントへ入社した後シロクに所属し、2年間は広告営業をしていました。会社として何か新規事業を始めるという時期に社長の飯塚(勇太)から声を掛けられたのがきっかけでした。当時のシロクは社員数が30人ぐらい。トップとの距離が近く、社内に新規事業を始められる環境が整っていたことも幸いしました」

 営業時代は1年目から現場のリーダーを任されたというポテンシャルやリーダーシップが評価され、井上さんは新規プロジェクトの担当に抜てきされた。井上さんが、プロジェクトを始めるに当たってまず考えたのは、「自社の強みを活かす」こと。広告事業で培ったマーケティングの知見やエンジニアたちの技術力がいきる新規事業は何か――思いを巡らせているとき、ひらめいたのは「通販で、女性が手にしたときに高揚感を味わえる商品」だった。

<ヒットを生み出したワケ>1 自社の強みを活かせる事業を考えた
井上さんが生み出したN organic。通販でありながらワクワク、高揚感をもたらす商品を目指した
井上さんが生み出したN organic。通販でありながらワクワク、高揚感をもたらす商品を目指した

 「通販は地方に住んでいて好きなブランドショップがなかったり、仕事や子育てで忙しかったりする女性の強い味方ですよね。私自身も関西の出身なのですが、欲しいブランドの店舗が東京にしかなく、買えない場合がありました。ただ、通販で注文できたとしても、手に届くときにはお店で買い物をするときのような幸福感、高揚感が薄れてしまうこともあって……。通販でありながらワクワクできる、女性の暮らしを豊かにするブランドを立ち上げたいと思ったんです」

<ヒットを生み出したワケ>2 通販だけれど高揚感がある商品を意識

 実際に何を売るかアイデアを詰め、「美しい素肌は、何よりも女性の心を満たす」ことからスキンケアブランドの立ち上げを決意。30代以上の女性に向けた商品企画・開発を行うことになった。

 とはいえ、既に通販のスキンケアブランドは数多く存在している。いわば後発組となることに、井上さんは不安を抱かなかったのだろうか。

 「自分としては小売店と通販の間を突くようなブランドを立ち上げたかったので、レッドオーシャンにこぎ出すという認識はありませんでした。むしろ、『新しい市場をつくるぞ!』という意気込みのほうが大きかったですね」