ペルソナ像となる女性たちにヒアリング

 ブランドマネージャーとして決断を一任されていたため、社内で上申などの調整に苦労することはなかったという。

 しかし、新規事業を立ち上げるのも初めてなら、スキンケアブランドに携わることも初めて。まずは商品を使ってもらいたいペルソナ像となる女性たち──忙しくても、少しの工夫で毎日を豊かにしたいと願っている30代以上の女性たちへのヒアリングを始めた。

<ヒットを生み出したワケ>3 ターゲット層に丁寧にヒアリング

 「20代は比較的、時間やお金を自分のために使えます。でも、30代以上になると仕事や子育てで忙しく、なかなか毎日豊かな気持ちで過ごすのは難しいのではないでしょうか。友人のお姉さんが30代で子育て中と聞くと紹介してもらい、実際に約50人にヒアリングを重ねました

 ペルソナ像となる女性たちに話を聞くと、『買い物に行く時間がないから、通販を利用している』『時間はないけどオールインワンは手抜きをしているみたいでイヤ』『安さで選ぶよりも、お気に入りのブランドを使いたい』『肌に良い成分を使いたい』といった声が上がってきました」

入社3年目での新規プロジェクト立ち上げで、分からないことばかりだった。「身の丈に合わない仕事だと自覚していました。でも、絶対に逃げないと決めていました」
入社3年目での新規プロジェクト立ち上げで、分からないことばかりだった。「身の丈に合わない仕事だと自覚していました。でも、絶対に逃げないと決めていました」

 そうした悩みを解決するため、スキンケアブランドのコンセプトを「Natural」「Noble」「Neutral」の3つのN(要素)に定め、ブランド名を「N organic」に決定。商品ラインアップは、オールインワンの1アイテムではなく、スキンケアの実感を味わいつつも手間のかからない化粧水と美容乳液の2アイテム。また、「通販のため実店舗にかかるコストがない」という利点を生かし、高品質な商品をつくりつつも、化粧水が1本3800円と継続して使いやすい値段設定にすることにも尽力した。

 実際の商品化に向けては成分配合をどうするか、生産工場をどうするかなど、社内外の識者の力を借りながら、ひとつずつ進めていったという。サンプル品は第三者機関や専門機関に頼んで効果を実証してもらうとともに、モニター女性たちにも使用感を尋ねた。

 「ただ、新規事業の立ち上げ自体が初めてで、入社2年目と経験年数も浅くて……力不足を感じることもありました。でも、リリース時期を2017年と決めていたので、そこまでには何とか形にしなくてはいけません。製品開発にかける時間を短縮したくなかったので、社内外の人脈、使えるツールを駆使して乗り切りました

 社内にエンジニアがいるので、『こういうイメージの商品サイトをつくってほしい』とお願いしたら、すぐに応えてくれるのはありがたかったですね。みんな私より年上ですので、分からないことは教えてもらいながら進めました。だからといって必要以上にペコペコすることはなく、フラットな雰囲気を心がけていました。プロジェクトチームを強固な一枚岩にすることこそが成功の秘訣だと思います」

 プロジェクトチーム内のコミュニケーションを活発にするため、時には週に1回のペースで、頻繁に席替えを行った。「進捗状況について隣同士で話せれば、わざわざ会議をする必要もなく、時短にもなります」

<ヒットを生み出したワケ>4 チームのコミュニケーションを高めるため頻繁に席替え