テープが減っても使いやすい構造を実現

 開発担当が苦戦したのは、テープの量が減ってもマスキングテープをしっかりつかめる仕組みを作ることだ。普通のクリップでは、テープが少なくなるにつれて巻きの厚みが減り、しっかり挟めなくなる。この問題を解決するため、試作品の数は十数種類に及んだ。「しっかり挟めるクリップを実現したのが、『シーソー構造』です。クリップの下部がシーソーのように動きマスキングテープ残量の変化にも柔軟に対応するので、手で軽くおさえるだけで固定できます」と間宮さんは説明する。

 さらに、クリップのバネの力も調整を重ねた。バネが強すぎると、クリップを開くときに手に負担がかかる。さらに、クリップの勢いで手が滑ってカッターがとんでいってしまうことも。「女性の力でも簡単に開けて、ストレスなく使えるバネの強さのバランスにも苦労しましたね

 テープカッター カルカット(クリップタイプ)は、テープ幅10~15mm用と20~25mm用の2種類。マスキングテープは壁紙に使うような幅が広いタイプもあるが、一般的な幅のマスキングテープで使ってもらえるサイズに決定した。発売当初のカラー展開は、ライトブルー、ライトピンク、ホワイト。誰からも愛されるカラーの無地のデザインを採用した。

 価格は、10~15mm用は360円、20~25mm用は380円(それぞれ税抜)。「たくさんマスキングテープを買う方に手軽に手に取っていただけるように、マスキングテープ1個の金額と変わらない価格設定にしました」と間宮さんは言う。2017年11月の発売後は、話題を呼び店頭で欠品するなど、社内の想定以上のヒットを記録する。ヒット継続の理由については、続く後編コクヨ テープカッター 文具女子がリピート買いへにて。

取材・文/川辺美希 写真/直江竜也