ビール類の分野で異例のヒットを飛ばした、キリンビールの新ジャンル「本麒麟」。画期的なヒットを目指して開発がスタートしてから約2年、ついに発売を迎える。本麒麟チーム発足から完成までのストーリーを紹介した前回に続いて、今回は、発売後の取り組みや、ヒットを継続させることができた理由を、キリンビールマーケティング部新ジャンルチーム・ブランドリーダーの京谷侑香さんにに聞いた。

(上) キリン「本麒麟」大ヒットを生んだのは20代マーケター
(下) 「本麒麟」20代マーケター ピンチを乗り越えヒット拡大 ←今回はここ

予想外の売れ筋で品薄のピンチ 

 ビール類の分野に新ジャンルが登場してから、「のどごし〈生〉」以来の定番品を作れなかったキリンビール。「今度こそ」という思いで、開発した本麒麟は、2018年3月についに発売された。その売れ行きは、想像以上。「売り場で、陳列したそばから商品が消えていくという、私が見たことのない売れ方でした。江口洋介さんに登場してもらったCMでも『驚くうまさ』を一貫して伝えていたので、それを覚えていたお客様が、店頭の赤い缶を見つけて手に取ってくださったようです。ビールよりも安いし、そのうまさからリピートしていただきました」と京谷さん。

発売直後から異例のヒット。京谷さんは増産態勢の整備に追われた
発売直後から異例のヒット。京谷さんは増産態勢の整備に追われた

 想定を超える売れ行きで、商品が品薄状態になってしまうことは、発売1週目に予想ができた。マーケティングチームは喜ぶ暇もなく、増産態勢の整備などの対応に追われた。生産拠点を6工場から9工場へ増やすことを決定したものの、態勢が整うまでの4月から5月は、商品を十分に供給できない時期が続いた。

 「あのときの生産部門や営業の協力態勢を思い出したら、今でも涙が出ます。生産部門の方も、急いでレシピを作って準備をして、休日出勤も含めて、これまでにないスケジュールで進めているのに、本麒麟が売れていることを本当に喜んで頑張ってくださった。販売に関わるお得意先の方々にもご迷惑が掛かってしまったので、営業部門にも謝罪に行ってもらうことになりましたが、お客様の反応をポジティブに受け取り、再開に向けて真摯に対応してくれました。社を挙げて、本麒麟の増産開始後の第二の山に向けて、モチベーション高く取り組みましたね