この夏に放送されたTBSの連続ドラマ『私の家政夫ナギサさん』。家事と恋に不器用な28歳キャリア女性のリアルな物語が共感を呼び、大きな話題となった。このドラマの企画立ち上げから制作に大きく関わったのが、TBSテレビ編成局編成部の松本友香さん(28歳)。8歳からドラマ制作に憧れて夢をかなえ、入社3年目でプロデューサーデビューを果たした松本さん。今回は、自身のキャリアの原点を振り返るとともに、ナギサさんの年代に近いベテランスタッフとメイに近い若手スタッフとの異世代間で生まれた、制作チームの化学反応について聞いていきます。

(上)私の家政夫ナギサさん 28歳企画編成 高視聴率の舞台裏
(中)わたナギ 独身女性だって苦手な家事をプロに頼っていい
(下)わたナギ企画編成 松本友香 若手とベテランは補い合える ←今回はここ

人気ドラマ『私の家政夫ナギサさん』<ヒットを支えた異世代間の化学反応>①若手女性の感性を生かし、経験豊富なベテラン陣がサポート/②担当ジャンル・部署を問わず、幅広い視点から意見交換をした/③互いの譲れない意見がぶつかりながらもアドバイスは受け入れ、より良い案を探しながら取り組んだ/TBSテレビ編成局編成部/松本友香さん

 ヒット作に携わり、テレビドラマ制作者として着実にステップアップしている松本さん。その原点をたどると、京都生まれの映画館などが近くにはない環境で、テレビを主な娯楽として育ちドラマが大好きになった。8歳の頃から、テレビ誌に載っている相関図を切り抜いて、ノートに貼りながら「自分だったらこんなキャスティングにしたい」と妄想して遊んでいたほど。親から「テレビ局に入ればそういう仕事ができるよ」と教えられ、高校生のときには具体的にテレビ局を目指そうと考えていたという。

 「その頃『流星の絆』(2008年)が大好きで見ていたので検索したら、プロデューサーのところに『磯山晶』という女性の名前があったんです。磯山が上智大学の新聞学科出身だったので、ここに行けばTBSに入れるんだと思い、実際に入学しました」

 大学卒業後2015年にTBSに入社、同年10月ドラマ制作部に配属された。初めてプロデューサーを経験したのは、入社3年目深夜ドラマの『3人のパパ』(17年)。『ゆとり・さとり世代』と呼ばれる、シェアハウスに暮らす男3人が、過去の無責任な行動が原因で赤ちゃんを育てることになるという、笑いあり、涙ありのコメディー作品。当時、TBSの深夜ドラマ枠として「水ドラ!!」(15年~17年)があり、若手クリエイターを育てる狙いで、入社1年目から12年未満の人が企画を出せる枠として設けていた。松本さんが『逃げ恥』でADをしていたときに企画が通り、『逃げ恥』を7話で抜けて、『3人のパパ』制作に入ったという。

 「スタッフ全員が年上で、本当にゼロから勉強という感じでした。今編成局長の瀬戸口(克陽)がプロデューサーだった『99.9 ―刑事専門弁護士―』(16年)で、私はAP(アシスタントプロデューサー)をやっていたこともあって、瀬戸口に指導係としてついてもらって。やりたいことを尊重してもらい、ゼロから取り組みました」