風呂掃除のストレスに目を向けて差別化

 市場で生き残るためには細かな改良ばかりしていても意味がない、新しい価値を提供してとがった存在になるべきだという課題を掲げたマーケティングチームは、日々の風呂掃除のストレスに目を向けた。それまでも、販売されていたお風呂用洗剤は「日々のお掃除は洗剤をかけて流すだけ」とうたっていたが、ザラザラしたバスタブの汚れは洗剤を数回プッシュして流すだけでは落としきれず、実際、大半のユーザーはスポンジやブラシでこすって汚れを落としていた。「こすらなかったらキレイになるはずがない」という思い込みを抱いていた。そこに開発チームはチャンスを見いだした。

開発がスタートとした当初、風呂用洗剤市場におけるライオンのシェアは伸び悩んでいた。左が宮川孝一さん、右が武藤美穂さん
開発がスタートとした当初、風呂用洗剤市場におけるライオンのシェアは伸び悩んでいた。左が宮川孝一さん、右が武藤美穂さん

バスタブの汚れのみにフォーカス

 社内のマーケティング人材発掘プログラムで評価され、2014年からチームに参加した武藤美穂さんは、「こすらなかったらキレイにならないという思い込みを打ち破る商品を作りたいと思いました。他社製品ともしっかり差別化できます。吹きかけただけで確実にバスタブの汚れを落とせる商品にこだわりました」と言う。

 通常、風呂用洗剤はバスタブだけでなく、洗い場やシャワーヘッドなどの水あかや防カビにも配慮した“全方位型”の商品を開発することがほとんどだったが、今回はあえて「バスタブ」の「汚れ」のみにフォーカス。バスタブ内の汚れだけは確実に洗剤を塗布しただけで落とせる商品作りを始めた。汚れのメカニズムを研究する部門とも連携して開発を進めた結果、水道水の中にあるカルシウムが湯垢と結合してバスタブにこびりつくことを発見。そこで「バスタブクレンジングは、カルシウムと汚れを切り離して、カルシウムがバスタブにこびりつく力を無くせるようにしました。ふやけて浮いた汚れが、シャワーをかけると落ちるという仕組みです」