100を超える試作で味を再現

 東條さんをまず悩ませたのが、バスク風チーズケーキ特有の食感と味の再現だ。経験のない食感や味は、どんな原料と配合で作られているのか想像がつかなかった。東條さんは、専門店の実際の商品や、世の中に出回っているレシピ本など、あらゆる情報から原料を探った。さまざまな産地のチーズの研究と配合の調整を繰り返し、表面のこんがり感と中身のなめらかさを再現するために試作を重ねた。

 焼き加減の再現にも苦戦した。専門店のバスク風チーズケーキはサイズが大きいため、焼くときに火がじっくりと通り、中がしっとりなめらかになりやすい。一方、コンビニスイーツのサイズは基本的に1人用として作られる。バスチーも、手のひらサイズながら食べ応えも感じられる1人前のサイズにした。「サイズが小さいとすぐに火が通りしっかり焼けてしまうため、しっとりなめらかを再現するのにちょうどいい焼き方が分かるまで苦労しましたね」と東條さんは言う。

「試作品の数は100を超えました」
「試作品の数は100を超えました」

 使用するチーズも数々の種類を試した。味がおいしく、クセが強すぎず幅広い世代に好まれるチーズを探した結果、プリンのようにクリーミーで、カラメルとも相性のいいチーズを採用。さらに、工場での再現にも時間を要した。「開発室で商品が完成してからも、量産の工場で作れるようになるまでにさらに時間がかかりました。あのなめらかさを工場の大きなオーブンで表現するのが本当に難しかったんです」。試作品の数は100を超え、商品の完成までに気づけば半年がかかっていた

チーズの産地や焼き方などおいしさの再現に徹底的にこだわる