懐疑的だった社内を説得

 これまでにないおいしさとインパクトを持つコンビニスイーツが誕生したが、当時のローソンの社内は、チーズケーキの新商品に懐疑的だった。「ちょうど1年前に出したベイクドチーズケーキは、バスチーより低い価格でしたが、想定していたよりは売れなかったんです。『チーズケーキ、本当に売れるの?』という空気がありました」。そこで東條さんは社内で、専門店のバスク風チーズケーキとバスチーを比べる試食を実施。バスク風チーズケーキのおいしさと、専門店に比べて遜色ない味がコンビニスイーツの価格で再現できることを舌で感じてもらい、説得に成功した

チーズケーキの新商品に懐疑的だった社内をおいしさで説得

 発売が決まると、マーケティング部門とタッグを組みネーミングやパッケージのデザインに取りかかった。呼びやすさと、一見どんなものか想像がつかず「これ、何だろう?」と気になる名前「バスチー」を採用。「バスク風チーズケーキと言われても、専門店がないエリアの人には特に何のことだか分からないし、長くてキャッチーじゃない。バスチーという親しみやすいネーミングで、話題として広がってほしいと思いました」と東條さんは言う。

キャッチーなネーミングと店頭で目を引くパッケージ

 パッケージやロゴは、黄色と黒を基調にしたインパクトのあるデザインを採用。これまで温かい雰囲気で統一してきたUchi Cafeのデザインと一線を画したビビッドな色合いだ。「パッケージのデザインは基本的に、商品に合ったカラーにしています。チーズケーキなので黄色を基調にしていますが、売り場で目立たせるために、これまでの定番からあえて外して原色にしました

 そして、バスチー発売が迫る2月初旬に、1回目のテスト販売を実施。その結果が、バスチーの生産体制や売れ行きを左右することになる。バスチーのヒット継続の理由は、近日公開の後半で。

「呼びやすいキャッチーな名前と目に付きやすい原色のパッケージにしました」
「呼びやすいキャッチーな名前と目に付きやすい原色のパッケージにしました」

取材・文/川辺美希 撮影/北山宏一