日経doors前編集長の鈴木陽子がつづるコラム、今回が最終回です!

 皆さんこんにちは、日経doors前編集長の鈴木です。いつも日経doorsをお読みいただき、ありがとうございます。実は日経doorsは編集長が交代となりまして、この編集長コラムは今回が最終回となります。そこで今回は、かねてより私が取り上げてみたかった「コンプレックス」について考察したいと思います。

 「コンプレックス」の中でも、今回は特に「身体的なコンプレックス」を考えます。というのも、私自身が身体的コンプレックスの持ち主で、身長142cmと小柄。それだけであれば私だけの問題で済みますが、日経WOMAN、日経ウーマンオンライン、そして日経doorsと女性向け媒体に携わって多くの女性を取材してきた中で、自己肯定感や自尊心を持つことができない原因がコンプレックスにあるという人に遭遇することがそれなりにあり、コンプレックスと戦っている人に向けて何か発信できればと考えていました。

 コンプレックスが原因で自己肯定感を高く持つことができない──根深い問題ではあります。低身長という事実は、永遠に私に付いて回ります。今のところ答えは出せていませんが、コンプレックスを克服しようとすると失敗するので、低身長という事実と共存するための工夫を考えるようになりました。

コンプレックスは、人から言われてやって来る

 私が幼い頃は、低身長であることについてはさほど大きな問題ではありませんでした。ところが人から「チビ」と呼ばれるようになってから状況が変わっていきました。

 そこで「私は小さいんだ」という自意識が芽生えました。それが劣等感のようなものに変わっていきました。いじめはありませんでしたが、男子が女子にちょっかいを出すという構図では、ターゲットになりがちでした。「弱いもの」として見られるのが苦痛でした。

 低身長にまつわる出来事が子どもの頃のほろ苦い思い出で終わっていればいいのですが、私の場合は現在進行形です。大人になると精神力がついてくるので、くよくよと悩むことは減りました。でもコンプレックスはお化けのようで、ある日突然フワッと現れるのです。

 どんな時にコンプレックスのお化けが姿を現すのか。職業柄、多くの人に会うことも関係しているのかもしれないのですが、身長のことをわざわざ話題に出す人がけっこう多いのです。だいたい「小さくてかわいらしいですね」という言葉がセットになります。

 何も言われなければ心穏やかに過ごすことができますが、「小さくてかわいらしいですね」という言葉をかけられるたびに、隠れていたコンプレックスのお化けが現れて、古傷をチクチクと突くのです。

 最近は、子どものクラスメートにも「○○ちゃんのおかあさん、ちっちゃいね」と面と向かって言われます。相手が子どもなので、「そうだよ、世の中にはいろんな背丈の人がいるんだよね」と受け流しますが、子どもの頃から人の外見をあれこれ言うのは、テレビ番組や大人の会話の影響が少なからずあるのだろうと考えます。