昨年10月、39歳でサイバーエージェントの専務執行役員に就任した石田裕子さん。新卒入社後2年間で13回社内表彰を受け、27歳で女性初の営業局長、30代では子会社の社長を2社経験、そして女性で初めての同社専務執行役員に就任するなど、キャリアの階段を駆け上がってきた。プライベートでは2児の母でもある。華麗な経歴により、百戦錬磨の近寄りがたいイメージを持たれがちだが、「失敗の数なら誰にも負けません」と朗らかに笑う。そんな石田さんの仕事観を大きく変えた新人時代の失敗経験と逆境から学んだ教訓とは――。

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(中)27歳で60人のリーダーに 石田裕子 指示待ち部下に模索
(下)石田裕子 孤独と重責の社長経験 同業夫婦・円満のコツ

 社内で「女性初」の役職をいくつか経験してきたせいか、経歴だけを見て、順風満帆なキャリアをイメージされがちなのですが、実はそんなことはありません。これまでの道のりを振り返ると、失敗のほうがはるかに多い。小さなミスは日常茶飯事で、「完璧なキャリア」とは程遠いのが実情です(笑)。

サイバーエージェント専務執行役員 石田裕子さん
サイバーエージェント専務執行役員 石田裕子さん

 特に新人時代は、「とにかくやってみる」をモットーに、がむしゃらにトライアル・アンド・エラーを繰り返し、年間100回を超えるほどの失敗を重ねてきました。今でも鮮明に覚えているほどインパクトの大きい失敗は、入社2年目に起こした顧客との契約トラブル。その後の仕事観に大きな影響を及ぼした出来事です。

 今でこそ幅広い事業を展開しているサイバーエージェントですが、私が新卒入社した2004年は、創業してまだ6年目、インターネット広告代理事業のみを扱う社員100人程度のベンチャー企業でした。当時、インターネットの急速な普及に伴い、市場がどんどん拡大し、ネット広告の需要も急増していた時期。どの会社に行っても入社間もない新人の話にも熱心に耳を傾けてくれ、新しい提案を受け入れてもらえる。売り上げ目標も200%、300%を連続達成するなど、すべてが順調で仕事が楽しくて仕方ありませんでした。

 ところがそんな時、トラブルが発生。相手は以前からお付き合いのある顧客企業でした。