昨年10月、39歳でサイバーエージェントの専務執行役員に就任した石田裕子さん。27歳で女性初の営業局長、30代では子会社の社長を2社経験、そして女性で初めての同社専務執行役員に就任するなど、キャリアの階段を駆け上がってきた。「失敗経験は数知れず」と、振り返る石田さん。今回は、「答えを教えてあげるほうが早い」という考えから抜け出し、試行錯誤を繰り返した20代でのリーダー経験について話します。

(上)サイバーエージェント専務 石田裕子 億単位の損失に学ぶ
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(下)石田裕子 孤独と重責の社長経験 同業夫婦・円満のコツ

いつの間にか「答えを与える人」になっていた

 初めてリーダーを経験したのは、入社3年目。25歳の時でした。

 部下数名を持つリーダー職に昇格した私は、「リーダーとして成果を出さなくては」と、意気込むあまり、「こういう場合はこんなふうにするとうまくいきますよ」とか「では、次はこうしてくださいね」などと、ことあるごとに指示を出していたんですね。偉ぶっていたわけではありませんが、たった2~3年のキャリアとはいえ、プレーヤーとしての成功体験もありましたし、「答えを教えてあげるほうが早い」という気持ちがあったのも正直なところです。

 当初は、それでチームがうまく回っていたのですが、ある時、部下からの何気ないひと言で、これまでのやり方が間違っていたことを思い知りました。

 「石田さん、これでいいんですよね。次はどうすればいいですか?」。そう質問され、思わずハッとしました。いつの間にか私は、ただ「答えを与える人」になっていて、部下の「主体的に考える力」を奪っていたことに気づいたんです。よかれと思ってやっていたことが、「指示待ち部下」を生み出していた――その事実に大きなショックを受けました。

サイバーエージェント専務執行役員石田裕子さん
サイバーエージェント専務執行役員石田裕子さん