成果が出ない新人時代 MVP獲得への転機

 パーソルキャリアへの就職を決めたのは、「将来インドで起業したい」という私の夢を真摯に聞いてくれ、応援してくれたからです。

 熱い志を抱いて入社したものの、1年目の仕事ぶりは散々でした。仕事の進め方も分からないまま、がむしゃらに突き進んで空回りばかり。成果を上げようと必死になるあまり、お客さんをせかして怒らせてしまい、トラブルになったこともありました。さらに、納得できないと前に進めない性格から、一つ一つのタスクが気になり、「この作業には何の意味があるのですか?」「なぜ今これをやるのですか?」と上司を質問攻めに。今思えば、さぞかし面倒な新人だったと思います。

 営業活動に必要なお客さんに関する情報を丁寧に調べるなど、自分なりに努力をしていましたが、なかなか成果につながりませんでした。ところが、そんな私を見て、「そこまで頑張れるのはすごいと思うよ」と上司が認めてくれ、大きな取引先を任せてもらえることに。モチベーションもぐんと上昇し、最終的にはMVPを獲得することができました。

努力が結果につながらなかった入社1年目。仕事のやり方を変えることで入社2年目以降、MVPを獲得!
努力が結果につながらなかった入社1年目。仕事のやり方を変えることで入社2年目以降、MVPを獲得!

成果を上げるためのアクション

 やる気が空回りしていた新人時代の私が、なぜそこまでの成果を上げることができたのか。それは、「人を巻き込むこと」を学んだことが大きかったと思います。「うまくいっている人には、きっと秘訣があるはず」と、尊敬する女性マネジャーの一挙一動を観察し、電話の応対にも耳を澄ませていたところ、あることに気づきました。

 その先輩は、ささいなことでも感謝の気持ちを伝え、さりげなく相手のモチベーションを上げるような声掛けをしていたんです。アシスタントの人たちが先輩のために一生懸命動く理由が分かりました。

 そこからは、私もそのやり方を徹底的にまねするように。業務上のやりとりしかしていなかったアシスタントの人たちをランチに誘ってコミュニケーションを深め、「実は私、MVPを狙ってるんです! どうか協力してもらえませんか?」とお願いしましたし、仕事でうまくいった時は、「あの時、〇〇さんがああいう風にしてくれたおかげです。ありがとうございます」と、その都度お礼を言うようにしました。すると、周囲の反応がどんどん変わっていき、「MVP に向けて一緒に頑張ろう!」と動いてもらえるようになったんです。

 仕事のやり方も大きく変えました。それまでお客さんへの提案書などは、社内のテンプレートに沿って作っていたのですが、「一つ一つの作業にもっと意味があるはずだ」と考えるようになりました。

 どうすればうまくいくのか、思いきって先輩に尋ねたところ、「お客さんのもとを訪れる時はしっかりとした仮説をもって向き合うこと」「資料はたくさん作るのではなく、きちんとしたものが1枚あればいい」など、具体的で役立つアドバイスをたくさんもらえるように。客先にも同行させてもらい、いろいろな人の力を借りることで、スキルを学んでいきました。

周囲に快く協力してもらう工夫

 忙しい先輩たちに快く協力してもらうには、自分の本気の姿勢をしっかり伝えることが大事だと思います。

 何を目指し、どんな風になりたいのか。どこまで到達したいのか。そんな思いを普段の雑談やチームで飲みに行った時にできるだけ話すようにして、真剣に取り組んでいると分かってもらえるように心掛けました。私の本気度を意識的に伝えているうちに、「そこまで考えていたなんてすごいね」と応援してもらえる雰囲気になり、先輩たちがどんどん熱心に教えてくれるようになりました。

 MVPをとった時に、「本当に頑張ったね!」と、皆さんが自分事のように喜んでくれたことは、今でも忘れられない思い出です。


 後編「インドで家事代行業 現地チームのモチベアップに成功」では、失敗経験から学んだチーム力を上げるリーダーの心得やパートナーとの遠距離婚についてもさらに話を聞いていきます。

水流早貴
サクラホームサービス 代表取締役
水流早貴 1992年生まれ。岐阜県出身。都留文科大学卒業。学生時代にインド現地企業・NGO、フィリピンの社会的企業でインターン。2016年パーソルキャリアに入社。約2年半、人材紹介事業で法人向けの採用コンサルティングに従事。退職後、ボーダレス・ジャパンに入社。2019年にインド法人を設立し、渡印。スラムの女性を雇用する家事代行サービスを開始し、現在はハウスクリーニング事業も展開している。新型コロナウイルス対策の全土封鎖中はスラムへの寄付活動にも尽力した。

取材・文/西尾英子 取材・構成/加藤京子(日経doors編集部) 写真/水流さん提供