ソーシャルビジネスを通じて社会問題の解決に取り組む、社会起業家集団ボーダレス・ジャパンに所属し、社会起業家としてインドで活躍する水流早貴(つる・さき)さん(28歳)。日本での常識や価値観が異なるインドでの起業の壁やマネジメントの苦労を経験。失敗経験から学び、チーム力を上げるリーダーの心得を身に付けてきました。パートナーとの遠距離婚についても話を聞きます。

前編 インドで貧困問題の解決へ 日本で学んだ成功アクション
後編 インドで家事代行業 現地チームのモチベアップに成功 ←今回はここ

 思うように成果が出せず挫折続きだった私が、人を巻き込む力や提案スキルを身に付けることで成果が伴うようになり、仕事がどんどん楽しくなっていきました。日々の業務に打ち込むかたわら、パーソルキャリアの行政受託事業で若者の就労支援を行うプロボノにも参加。そんな充実した社会人生活を送る一方で、「インドの貧困問題を解決したい」という志を胸に抱き、年に1度はインドに渡航し、現地の農村を訪れるなど、インドとの関わりは持ち続けていました。

 さらに休日は、NGOが主催する社会人起業家塾に参加し、勉強会やフィールドワークに明け暮れる日々。7カ月にわたるプログラムの一環として、インドネシアの現地企業でのインターンシップに参加したのですが、その時の体験が起業に踏み出す転機となりました。

28歳のとき、インドでハウスクリーニング事業を立ち上げた水流早貴さん
28歳のとき、インドでハウスクリーニング事業を立ち上げた水流早貴さん

 インターン先は、さまざまな事業を行うインドネシア最大のソーシャルビジネスの老舗企業。10日間のインターンシップの中で、70代になる創業者の男性に会う機会があったんです。「いずれインドで起業したいのですが、何かアドバイスはありますか?」。そう尋ねると、彼はこう言いました。

 「あなたがインドの社会問題を本気で解決したいと思うなら、まずは動き出してみたらどう? 最初からうまくいかなくても、少しでも動いてみることで、問題は前に進んでいくんだよ」

 今でこそ数千人という従業員を抱える大きな企業を率いるその起業家の方も、もともとは何もないところから「この国の社会問題を何とか改善したい」という志ひとつで事業を始めたのだと言います。その話に感銘を受け、心が大きく揺さぶられました。