計測した体の3Dデータをもとに、人工知能(AI)が一人ひとりの顧客に合ったインナーウエアを提案してくれるワコールのサービス「3D smart & try」。このプロジェクトを率いる篠塚厚子さんは、第1子出産後にデジタルの分野に異動し、新しい仕事に挑戦。子育てをしながらプロジェクトを主導する篠塚さんの今の働き方は、これまで何度も壁にぶつかってきた経験に基づいていると言います。前編に続き、今回は、これまでに直面した壁とキャリアアップに生きた経験を振り返ります。

(前編)ワコール篠塚厚子 チームは弱みを補い合う関係性が大事
(後編)ワコール 逆境は未来の成功につながる 頼るリーダーに←今回はここ

ビジネスの基本を繰り返し、道が開けた

 ワコールに入社して、最初に担当したのは百貨店営業でした。当時の営業は女性が少なく、百貨店の売り場に行っても、優秀なビューティーアドバイザーの皆さんとはまともに話すことができませんでした。「私は店舗の販売員さんたちに歓迎されていない。どうしたらいいのだろう」と考えた結果、当たり前のことからしっかりとしようと決めたんです。

 例えば、約束を守る、聞かれたことに誠実に答える、要望に耳を傾けて何らかのアクションを起こす、店舗の課題に対して前向きな施策を提案するなど。「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるような行動を積み重ねているうちに、私が店舗へ行くのを歓迎してくれるようになりました。「厚子にセールスの最優秀賞を取らせたい」と言ってくださる方もいて、頑張って成果を出してくれた結果、社内チャレンジ表彰(優秀賞)と最優秀セールスを獲得することができました。

「3D smart & try」のプロジェクトリーダーで、ワコール イノベーション戦略室 開発部長・シニアフェローの篠塚厚子さん
「3D smart & try」のプロジェクトリーダーで、ワコール イノベーション戦略室 開発部長・シニアフェローの篠塚厚子さん