リーダー候補たちの切実な悩み

 20代・30代は、キャリアのエンジンを加速したい時期と、結婚・出産など人生の転機が重なりやすい年代。実際、臼井さんの元に寄せられる悩みは、大別すると以下のような傾向があり、ライフステージによって複合的なキャリアの壁になることが少なくないと言います。

<20代・30代女性の主な悩み>
・ロールモデルがいない
・キャリアの方向性が見えない、目標が見えない
・活躍を期待されているが負担である
・仕事にやりがいや面白さを見い出せない

<リーダー候補の主な悩み>
・ロールモデルがいない
・管理職になったら子どもは産めないかも
・周りからの期待とプレッシャー
・信頼して人生を相談できる人がいない

<ワーキングマザーの主な悩み>
・もっと働きたいのに、思うように働けない
・周りに迷惑をかけて申し訳ない
・第2子・第3子を産むタイミングが分からない
・配慮はうれしいけれど、マミートラックかも
・ロールモデルになることを求められ、プレッシャー

 「テレワークの働き方が進む今、特にリーダーの皆さんが感じている不安は、オンライン上でさまざまな価値観のチームメンバーをどのようにまとめていくか。オンライン上のマネジメントは、多くのベテランリーダーも同じく手探りの状態。そういう意味ではそれぞれが失敗しながら新たな経験を積める、いい意味でリスタートの機会だと思います」と臼井さん。部署異動でのリーダーの場合、物理的な距離がある中で新しいチームメンバーの個性や要望を把握する必要があります。

 「同じ職場で席を並べて、本来空気で感じられた部分が見えづらいという状況では、自分の気持ちをきちんと言葉に出していく必要がありますし、特にリーダーやマネジャーになると、こうしてほしいというリクエストは明確に伝えて、相手がそれに対してどう返してくるか、対話を重ねて決めていくことがこれまで以上に重要になります

 政府は2020年までに「指導的地位に占める女性の割合を30%程度」とする達成目標を「2030年までの可能な限り早期」と最長10年繰り延べする調整に入りました。従来の慣習が崩れつつあるとはいえジェンダーの壁はいまだに厚い状況。女性リーダーが増えることで多様な価値観が認められ、今後の働きやすさに直結します。

 「女性のリーダーは増えていますが多くは課長職くらいまでで、部長や役員となると、まだまだな印象はありますね。組織の構造上の問題ももちろんありますが、スキルや能力があっても、自信や一歩を踏み出す気持ちの課題も大きいように感じます。長い目でキャリアを捉え、組織で求められる役割と自分のキャリアビジョンを重ねながら働くことができれば、充実感や働きがいはより高まりますよ」