「今」を熱く生きるメンバーたちの応援団長に

 私はよくキャリアを登山に例え、男性はより高い頂上を目指し、女性は日々の仕事の中に誰かに喜んでもらったり、ちょっとした成功の花が咲くのに幸せを感じたりしながら前に進み、気づいたら上に登れていた、という違いがあると思っています。もちろん今は多様化の時代ですし、性別などでひとくくりにはできませんが、多くの女性には結婚や出産、親の介護など、さまざまなライフステージの変化が押し寄せ、キャリアだけを見つめられないこともあります。それは上を目指していないというのではなく、熱さの種類が違うだけ。「今」を熱く生きている証拠なのです

 だからこそ、人生を左右する決断をいつ迫られるか分からない、という思いを抱きつつも懸命に仕事に向かう女性たちを理解し、サポートしたい。リーダーとしてみんなを引っ張るというよりは、メンバーみんなの人生や毎日が幸せでいてほしい、ということを考えてきました。

 メンバーの相談を聞き、それをできるだけすぐ解決するための行動に移し、安心させてあげる。立ち止まっていたら声をかけ、「大丈夫だよ。もうちょっとだけ進んでみよう」と背中を押してあげる。誰よりも彼ら、彼女らの応援団長でいてあげたい。それが私の役割であり、マネジメントの仕事だと思っています。先頭で旗を振って呼ぶのではなく、共に励ましながら歩いていく「並走型のマネジメント」、それが私のリーダー像です。

共に励ましながら歩いていく「並走型のマネジメント」が世永さんのリーダースタイル
共に励ましながら歩いていく「並走型のマネジメント」が世永さんのリーダースタイル

失敗もリーダー経験も20代から積めば、選択肢が広がる

 サマンサの9割以上の社員は女性です。結婚や出産などライフステージの変化が次々と訪れる可能性が高い30代。そのときに柔軟な働き方を選択肢として持っていられるようにするには、20代でたくさんの経験を積むことが大事です。もちろん結婚や出産をしない選択肢だってたくさんあります。しかし、どんな人生を進んでもキャリアや生き方に悩みがちなのが30代です。

 そうなると先のことはなかなか計画が立てづらい。会社なら5年後の事業計画を考えるのは当たり前ですが、「5年後のキャリアプランは?」と聞かれると私でも苦しくなってしまいます。半年以上先の流行を予測して商品の準備をするアパレル業界にいても、半年先のことを言われたら私は「そんな先のこと……」と重く感じてしまいます。若い世代の女性ならなおさらだと思います。それは仕事の優先順位が低いのではなく、一瞬一瞬を大事にしている意識の高さの表れだと私は受け取っています。

 だからこそ、サマンサでは20代からリーダーになる機会をどんどん与えてきました。30代前半には部長になる女性も出てきます。小さなハードルを早いうちから少しずつ用意して、気づいたら高いハードルが跳べるようになっていた、というのが理想ではないでしょうか。

 「私にはできない!」「もう辞めたい」と飛び込んでくる人もいました。そういうときは話をじっくり聞いて、一緒に問題を1つずつひもといていきます。そして「ずっと先は考えなくていいから、取りあえずこれだけ頑張ってみようか?」とすぐに越えられそうなハードルを一緒に設定してみます。そしてそれが越えられたら「見て、あんなに大変だと思っていたのに、越えられたじゃない! きっと次はスッとハードルが跳べるよ」と一緒に成長を喜び、その人の頑張りを言葉にして共に喜びます。すると、本人も自信になっていくのです。