25歳から組織の中でチームリーダーの役割を果たし、30歳で出産、産休・育休復帰と同時にサマンサタバサジャパンリミテッド(以下、サマンサ)執行役員に就任した世永亜実さん。同社上席執行役員として活躍後、40代からパラレルキャリアを歩み出した。現在も、サマンサ非常勤取締役とオイシックス・ラ・大地のアドバイザーを務め、多くの働く女性を育て励まし続けてきている。今回は、世永さんの「並走型リーダー論」を具体的に教えてもらった。

上 サマンサ非常勤役員 世永亜実 ドン底失敗経験が原動力
中 世永亜実 やる気のない部下と尊敬できない上司の対処法 ←今回はここ
下 熱狂的な二人を見つけ出してチームをつくる 世永亜実

やる気がないのではなく、表現が苦手な部下

 よく「今どきの若者はやる気がなくて」というようなことを言う人がいますが、私は見た目のやる気で判断しないようにしています。

 サマンサは平均年齢が20代後半、全体的に若い女性が多い会社です。今の若い世代の感覚は本当に私たちとは違う尊敬すべきものがあり、どうしたら1枚の写真で商品をかわいく見せるか、限られたSNSの文字数でいかにアピールするか、というようなことにもたけています。私は基本的に自分に特別な能力があるとは思っていないので、出会うすべての人がすごいなと思えて、一人ひとりの良さが羨ましいほどだと思っています。タイプの異なるメンバーすべてにその人の良さを見つけて、それを生かしてあげたい。

 「やる気がない」というのは、実際にはやる気がないのではなく、やる気のある表現が苦手なだけだったり、人と一緒にやる気を見せるのが苦手なだけだったりすることもあります。その人自身の能力の見せ方の違いだと思うのです。だからこそ、相手に敬意を払うためにも、決めつけることなく相手によってこちらからのアプローチを変えて気を付けます。

「やる気があるかないかは、その人自身の能力の見せ方の違い。自分が成長できているという実感を持ってもらうことが大事」と世永亜実さん
「やる気があるかないかは、その人自身の能力の見せ方の違い。自分が成長できているという実感を持ってもらうことが大事」と世永亜実さん

 そして大事なのは、自分が成長できているという実感を持ってもらうこと。前回より少しできることが増えていたら、「この前よりスムーズに発注できるようになったね! すごいじゃない」ときちんと認めて言葉にして、本人にも気づかせます。マネジャーとしては「成果」を上げさせるべきなのでしょうが、本人の「成長」を軸にサポートしてあげることで「成果」への道のりが充実したものになるはずです。

 部下のやる気がないと感じるのならば、それは部下の責任ではなくマネジメントをする立場の人の責任だと私なら思ってしまいます。本当にやる気がないのかそれを表現できないタイプなのか、やる気が出せない理由は何か、どんなサポートをしてあげられるのか、考えます。部下を生かすことこそマネジメントの役割ではないでしょうか。

 ちなみに、私はこの「部下」という言葉を、実は普段使いません。上司と部下の関係ではなく、チームとして仕事を一緒につくり上げていくという気持ちだからです。上から指示するのではなく、同じチームの「メンバー」として声をかけ、共に頑張っていくのだと思っています。