リクルートホールディングス執行役員兼リクルートマーケティングパートナーズの社長として約1200人の社員を率いる柏村美生さん。20代からリーダーとして頭角を現し、その後も順調に階段を駆け上がってきたかに見えるキャリアも、振り返るとアップダウンの連続だったそう。今回は、新入社員時代から初めてのリーダー経験、そして自ら提案して実現した中国での新規事業運営について。異国のダイバーシティ環境で身に付けた、「頼る」マネジメントスタイルに迫ります。

上 リクルート役員柏村美生 社長経験は挫折と挑戦の集大成
中 20代で中国赴任 「頼る」マネジメントでチーム力強化 ←今回はここ
下 リクルート役員柏村美生 家庭とキャリア両方欲張って

「早く仕事を覚えなくちゃ」 必死でもがいた新入社員時代

 「すべての人に役割のある社会を作りたい」――。そんな思いを胸にリクルートへ飛び込んだ私を待っていたのは怒濤(どとう)の日々でした。当時のリクルートは、ものすごくハードな環境で、みんな遅くまでパワフルに働き、求められる要求も高かった。そんな中、私といえば、仕事が全然できなくて毎日怒られてばかり。できない自分が悔しくて「早く仕事を覚えなくちゃ」と必死でもがいた新入社員時代でした。朝、どうしても出社する気になれず、1日中ソファでボーっと座っていたこともありました(笑)。当時の上司はさぞかし苦労したんじゃないかと思います。

 ダイレクトマーケティングという新規事業の部署に配属され、営業としてキャリアをスタート。上司から仕事を学びつつ、お客さんからもビジネスのイロハを教わり、たくさん鍛えていただきました。今思えば、できないながらも一生懸命な私を放っておけず、いろいろとアドバイスしてくださったのかなと感謝しています。当時のお客さんとは、いまだによいお付き合いが続いていますね。

リクルートホールディングス執行役員兼リクルートマーケティングパートナーズ代表取締役社長 柏村美生さん
リクルートホールディングス執行役員兼リクルートマーケティングパートナーズ代表取締役社長 柏村美生さん

 初めて小さいながらプロジェクトリーダーを任されたのは、ブライダル情報誌『ゼクシィ』に異動した28歳の時。それまで数十人規模の新規事業部で割と自由にやってきたのですが、ゼクシィは当時でも400人という大きな組織。関わる仕事の範囲が急に狭くなり、自分の介在価値に戸惑いました。

 「この仕事って、別に私じゃなくてもいいのでは?」とジレンマを感じたことも……。ですが、大きな組織の中でどんなふうに事業が連携しながら動いていくのかを間近で見るうちに、次第に俯瞰(ふかん)した視点で面白さを感じるようになり、いつしか仕事にのめり込んでいきました。クライアントとともにマーケットへ仕掛けをしたり、いろいろな人たちを巻き込みながらプロジェクトを横断で動かしたりすることも経験。チームの一人ひとりが役割を果たしていくことで、一人では到底成し得ない大きな力となる。ビジネスというものが少しずつ分かってきた時期でしたね。