リクルートホールディングス執行役員兼リクルートマーケティングパートナーズの社長として約1200人の社員を率いる柏村美生さん。20代からリーダーとして頭角を現し、その後も順調に階段を駆け上がってきたかに見えるキャリアも、振り返るとアップダウンの連続だったそう。今回のテーマは、多くの女性が直面する家庭とキャリアのバランスについて。「私たちには本当に大事なものを選び取りながら前に進む力がある。ぎりぎりまで欲張ってほしい」。柏村さん自身も直面し、その都度選び取ってきたワークとライフの選択肢。過去の経験から自分に課したリーダーのルールについても聞いていきます。

上 リクルート役員柏村美生 社長経験は挫折と挑戦の集大成
中 20代で中国赴任 「頼る」マネジメントでチーム力強化
下 リクルート役員柏村美生 家庭とキャリア両方欲張って ←今回はここ

失敗から成長がある 20代30代は積極的に挑戦を

 キャリアアップをしていきたいなら、失敗を怖がらずどんどん挑戦すること。成長に必要な要素は、それに尽きると思います。振り返ってみると、これまでの失敗から得たたくさんの学びが今の私をつくっています。「失敗すると周りに迷惑をかけてしまう……」と躊躇(ちゅうちょ)するかもしれませんが、ビジネスで一人がする失敗なんてたかが知れています。会社に貢献しようとあなたがした一生懸命なチャレンジは、たとえ失敗しても会社が潰れることはないので安心してください。「失敗したら恥ずかしい」とか、「人からどう思われるか不安」といった気持ちさえ手放せば、実はそれほどの痛手はないと思うんですね。たとえ一時的に評価が下がっても、長い目で見れば挽回のチャンスはいくらでもあるし、チャレンジしたという事実は自分の中に残ります。未来の経験値や自信に確実につながるはずです。

「社長と呼ばないで(笑)」と、気さくに過去の失敗や多くの学びを共有してくれた柏村美生さん
「社長と呼ばないで(笑)」と、気さくに過去の失敗や多くの学びを共有してくれた柏村美生さん

 今の立場からこうアドバイスをすると、「柏村さんはメンタルが強いから……」と思われるかもしれませんが、まったく逆。もともと、すごく悩みをため込むタイプです。30代までは、何か失敗するたびにズドーンと底まで落ち込み、できない自分にうじうじと悩むの繰り返しでした。

 でも、とことん落ち込み続けた先に見えてきたのは、落ち込んでいいことなんて、何一つない。周囲に気を遣わせて、チームの雰囲気を悪くするだけだった。それに気づいてからは、「失敗しても落ち込まない」をルールにしています。特に今は、上司が落ち込んでいると部下は不安になりますし、チームの士気も下がってしまう。失敗は学びのチャンスですから、振り返って反省することはとても大事。でも、ひとしきり反省したら、そこでおしまいにする。そう決めています。