「定時出社、定時退勤の企業で妊活は難しい」と痛感し転職

 Rettyで働く後藤紗也佳さんは結婚3年目。「そろそろ子どもが欲しいけれど、仕事をしながら妊娠することに漠然とした不安がある」と話す。

 その発言に大きくうなずいたのは、仕事と妊活の両立で苦労した経験のあるC Channelの浜内久乃さん。現在結婚6年目で、2年目のときから妊活をスタートした。もともと大手企業で働いていたが、妊活を見据えてフレックス制のC Channelに転職したそう。

 「私は多嚢胞性卵巣症候群と昔から患っていた子宮内膜症のため、妊娠が難しい体でした。だから本格的に妊活するには、婦人科のある病院へ毎日通わなくてはいけなくて。しかし、当時働いていた企業は定時出勤・定時退社を基本としていたので、病院へ通える時間はほとんどありませんでした」(浜内さん)

 病院での待ち時間が読めないため、仕事に遅刻してしまうこともしばしば。さらに浜内さんの場合、保険適応外の薬が必要だったため、医療費も高額に。体力面以上に、精神面で苦しい日々が続いたそう。

 そのため、妊活をスタートしてから程なくして、転職活動を開始。大手企業の採用面接では出産の希望の有無を聞かれたこともあったという。そんな中、女性が働きやすく自由度の高い社風のC Channelへ転職を決めた。とはいえC Channelの仕事が思った以上に楽しくなり、今は妊活をお休み中。再開のタイミングを見計らっているところだそう。

 産婦人科医の月花さんは、「不妊治療をしていない女性にお勧めしたいのは、AMH(アンチミューラリアンホルモン)を測る検査を受けることです。AMH検査は、卵巣の中に卵子がどれくらい残っているのかを調べるための検査(血液検査)です。卵子の数を調べることで、妊活や今後の人生設計に役立てることができます」と言う。

優秀な人材なら「時間が空いても職場に戻ってきてほしい」と思われる

第1子の育児と仕事を両立している、Retty・サーバーサイドエンジニアの鈴木佑理さん(写真右端)が自分の日々のスケジュールを説明
第1子の育児と仕事を両立している、Retty・サーバーサイドエンジニアの鈴木佑理さん(写真右端)が自分の日々のスケジュールを説明

 「『キャリアアップをしたいけれど、妊娠する可能性があるから転職するタイミングが分からない』と悩む女性は多い」と話すのは女性のライフキャリア支援サービスを展開するLiBで働く武井梨名さん。

 「私も将来子どもが欲しいと思っているので、そう悩む女性の気持ちは分かります。ただ、転職検討時に、既に妊娠が判明していたら、そのタイミングでの転職は個人的にはお勧めしていません。新しい職場と妊娠生活の両立は慣れないことばかりで、精神的に苦しく感じてしまう可能性があるからです。しかし、まだ妊娠が分かっていない状況なら、キャリアを優先して転職してもいいのでは。どうなるか分からない段階で思い悩まなくもいい」(武井さん)

 採用からマネジメントまで経験のある後藤さんも、妊娠したからといってキャリアを諦める必要はないと語る。「日本の女性は新卒で入社したときにはキャリアアップを考えていても、年齢を重ねるうちに、『私には昇進なんて無理だ』と思い込んでしまう傾向があります。女性であるがゆえに、将来は家庭のことに時間を取られてしまうと考え、諦めてしまうんですね。しかし、優秀で職場のカルチャーにフィットする人材は、実は、そんなに多くはいないのです。ですから、管理職の立場からすれば、そうした優秀な人材であれば、出産・育休で少し間が空いてしまっても、職場に戻ってきてほしいと思うはずです」(後藤さん)

 Rettyの鈴木佑理さんは、第1子の育児と仕事を、日々どのように両立しているかを詳しく説明し、こう語った。「私は育休から復職するにあたり、会社のメンバーと定期的にコンタクトを取って、復職時のポジションや仕事内容を把握したり、事前に勉強したりして心の準備をしました。復職後は、いきなり第一線を目指さず、『この時期までに第一線に戻る』などと計画を立て、その目標を目指して環境を整えました。生活面でも頑張りすぎず、家事などは自分の許容範囲を超えないように意識していました」(鈴木さん)