「働く」うえで大事にしたい価値観を見つめ直す

 大矢さんが提案したのは、例えば「仕事」という切り口から考える場合、「収入」や「働きがい」「職種」などの中で、自分はいったい何を重視したいのだろうかと、改めて考えてみること。

 「仕事」の他にも、挙げてくれた切り口はこちら。「会社」(項目は「安定性」「規模」「人間関係」など)、「労働条件」(項目は「労働時間」「雇用形態」「福利厚生」など)、「プライベート」(項目は「家族」「育児」「介護」など)。その他にも「自己啓発」「資格取得」「ボランティア」「健康」などの項目があるそうです。

 参加者のうち二人に意見を聞くと、二人とも「働きがい」と「家族」を重視したいと口を揃えました。「このお二人のご意見はたまたま一致しました。でもこれが正解ということではありませんし、重視したい項目は状況やタイミングによって変化しても良いものです。このように分析を深めて、自分の価値観を把握しておくと、今後のキャリア構築を考える軸にできるので、定期的に自分の価値観を棚卸しすることをお勧めします」(大矢さん)

働くときに大事にしたい項目は何か。そう問われ、資料に自分の意見を書き込む参加者たち

自分の個性や強みを振り返る「ポータブルスキル」という考え方

 次に大矢さんは「ポータブルスキル」という考え方を解説しました。


大矢  ポータブルスキルとは、ある業界・職種で一定期間以上働くことで得られる専門知識や技能ではなく、仕事への取り組み方や人との関わり方、職場環境や組織への適応の仕方などのソフトスキルを指します。

 具体的には、目の前の仕事で取り組むべき課題があった際、どうやって現状を把握し、情報を収集し、計画を立てて遂行するか。人と関わる際に、社内外の人々とどう関係を作り、周りからの支持や合意を得るか。上司として部下をどうマネジメントするか。職場環境が変わった際に、積極的に行動するか、それとも、まずは状況の把握に努め、周りから求められることから進めることが得意か、などのポイントがあります。

 こういったスキルや、適応の仕方のタイプは、どんな組織に属すにしても必要不可欠な要素で、皆さん一人ひとりのオンリーワンの個性です。

 私は転職コンサルタントという立場上、企業側から、「人を採用する前と後で、その人材を評価する項目が変わる」という話をよく伺います。採用時に最も重視していたのが「専門的なスキル」や「業界経験」だったとしても、入社後の評価では、人柄や仕事への取り組み方、つまりポータブルスキルも、大事になってくるそうです。

 専門性を身に付けることを否定しているわけではなく、専門スキルの獲得は継続しつつ、冒頭でお話した自分ならではの「価値観」も大切にしながら、どんな分野で働くにしても役に立つ、自分のポータブルスキルに注目して仕事に活用すると、より自分に合った働き方ができるのではないかと思っています。


 参加者からの質問もありました。


参加者 例えば、履歴書に自分の「調査能力」をポータブルスキルとして書きたい場合はどう書けばよいでしょう。

大矢  調査するに当たり、ニーズの把握、目的の立案、調査方法の決定、計画の立案、各種計画を進める過程での課題の乗り越え方、関係者との関わり方、調査へ取り組む際の姿勢、「なぜそのやり方を選択したのか」という自分の思考や行動などを整理し、言語化して棚卸ししてみてください。

 自分にとっては当たり前だと思うことや行動が、オンリーワンの個性になり得ます。そこで出てきた、思考性や行動の仕方、人との関わり方を自己PRとしてまとめるとよいと思います。