「海外で働きたい」という思いを深掘りすることが大事

 語学に関する質問も寄せられました。


参加者 ベトナムの職場では、英語を使っていたのですか?

千葉 ベトナムでは日本への留学経験を持つ人や、日本語学科を卒業し日本語堪能な人も多いです。特に私は日系の会社で就業していたこともあり、社内ではほぼ日本語を使っていました。日常生活に必要な最低限のベトナム語は覚えました。もちろん日本語を話せない社員や友人もいましたが、日本語と英語、ベトナム語を混ぜて、リアル「ルー大柴」のような感じで話していました(笑)

 片言でも現地の言葉を話せると喜ばれます。また、互いの第三言語である英語を使うよりどちらかの言語に寄せた方が、察することもできますし阿吽(あうん)の呼吸が伝わるというか、コミュニケーションがスムーズになると思います。日本語利用率の高さは企業によって大きく異なると思います。


 ここで、大矢さんが「海外転職と英語」の関係性について補足してくれました。


大矢 「海外で働いてみたい」「海外で英語を使って働いてみたい」という漠然とした思いを持つ方はたくさんいらっしゃいます。私も昔はそうでした。英語圏で働いてみたい、という憧れを抱いてカナダに渡ったものの、実際に働いてみると何か違うと感じ始めたのです。そのときやっと私は自分が「英語を使って仕事をしたかった」のではなく、「日本人として価値ある仕事がしたかったんだ」ということに気付きました。ですから皆さんにも、海外転職の活動を本格化させる前に、「海外で働きたい」「海外で英語を使って働きたい」という気持ちを深掘りして、「自分が本当にやりたいことは何なのか」と考えてみることをお勧めします。

 もちろん海外で働くに当たって英語を話す必要はありますし、英語が話せると可能性が広がるのは事実です。ですから、「英語を使って仕事がしたい」という気持ちを大事にし、ブラッシュアップは継続していただきたいです。

 ただ誤解を恐れずに言うと、必ずしもネイティブレベルを目指す必要はないと思っています。それよりも大事なのは、英語を使って有効な関係性を構築できたり、円滑な交渉ができたりすること。英語を流暢に話せる人でも相手とうまく関係性を構築できずに揉めてしまう方もいますし、あまり話せないのになぜかうまくいく方もいます。後者の方は、恐らく非言語コミュニケーションや異文化理解力が長けているのだと思います。英語を話すということにフォーカスしすぎるのではなく、自分の「当たり前」を疑ったり、違う考え方や文化を受け入れるという視点も持ったりしていただければと思います。

 キャリア形成に正解はありません。不特定多数の情報に惑わされず、自分が「幸せ」だと感じる瞬間が少しでも増えるような選択をしていってください。


 セミナー終了後、参加者は満足げに会場を後にしました。海外転職は意外と身近にある選択肢のようです。気になる方は情報を集めてみてはいかがでしょうか。

取材・文/小田舞子(日経doors編集部) 写真/窪徳健作