7月7日、東京・新宿の会議室に海外転職に興味を持つ25~35歳前後の女性10人が集まり、「ポータブルスキル」とは何か、海外の職場で日本人に求められること、海外への転職活動で直面しがちな課題とその解決策などについて、積極的に情報を交換しました。その様子をリポートします。

国内から海外に転職する事例は増加中 行き先の95%はアジア

 2018年12月~2019年1月に実施した日経doors創刊アンケートによると、「今すぐ転職したい」13.1%、「いつか転職したい」37.2%で、合計50.3%、つまり過半数の人が転職に対して前向きであることが分かっています。また、転職活動状況を聞いたところ、「しっかり転職活動中」と答えた人は全体の3.5%、「緩やかに転職活動中」21.6%で、合わせて25.1%、4人に1人が転職活動を行っていることが明らかになりました。

 ちょうど転職に関するセミナー「【女性向け】ご自身の「これから」を考える~ポータブルスキルの活用・キャリア座談会」が開催されると聞き、取材しました。当日は冷たく激しい雨が降る中、事前申し込みの10人全員が集まり、濃密な意見交換が行われました。

 ポータブルスキルとは、「業種や職種が変わっても通用する、持ち運び可能な能力」のこと。資格や専門性の高い経験を生かして業務をこなす能力だけではなく、そのとき自分が置かれた職場の状況を把握して、自ら課題を設定し、計画を立て、課題を遂行し、対応していく力を指します。

 このセミナーの共同主催者は、海外就職支援を行うGJJと、世界11カ国で人材紹介会社を展開する転職エージェント、ジェイエイシーリクルートメントの2社。

 GJJ海外就職デスクのディレクター、田村貴志さんは「現在、日本の職場から海外に転職する事例は増加しています」と言います。同社を介して決まる毎月の転職件数は「前年比1.3~1.5倍」(田村さん)。転職先は全世界ですが、95%を占めるのはアジア。中でもベトナム、シンガポール、インドが多く、業界は製造業やコンサル業など様々。総務や営業といった職種もあるそうで、現地の日系企業に転職するケースが多いといいます。

 「海外転職を志向する方々は、海外の職場で働くことにより、日本では得られない経験を積み、さまざまなスキルを身に付け、よりパワーアップして日本に帰ってきたいと考えています。中には、海外で長期的なキャリアを積む覚悟で飛び立つ方々もいらっしゃいます」(田村さん)

 イベントは、共同主催者であるジェイエイシーリクルートメント、ベトナム・ハノイオフィスに勤める大矢敏美さんの話から始まりました。

大矢敏美さん<br>ジェイエイシーリクルートメント ベトナム・ハノイオフィス シニアコンサルタント<br>2011年に大学を卒業後、キーエンスグループの各種盤用クーラーメーカー、アピステに入社。事業支援グループで購買・在庫管理・出荷物流管理・社内インフラシステム改善業務に約5年間従事し、主にバックオフィスからの現場改善業務に携わる。その後、フィリピンとカナダへの留学、ワーキングホリデーを経て、「アジア人としての価値をより発揮できる環境で働きたい」と考えるようになり、2017年にジェイエイシーリクルートメント・ベトナムに入社。
大矢敏美さん
ジェイエイシーリクルートメント ベトナム・ハノイオフィス シニアコンサルタント
2011年に大学を卒業後、キーエンスグループの各種盤用クーラーメーカー、アピステに入社。事業支援グループで購買・在庫管理・出荷物流管理・社内インフラシステム改善業務に約5年間従事し、主にバックオフィスからの現場改善業務に携わる。その後、フィリピンとカナダへの留学、ワーキングホリデーを経て、「アジア人としての価値をより発揮できる環境で働きたい」と考えるようになり、2017年にジェイエイシーリクルートメント・ベトナムに入社。

大矢さん(以下、敬称略) 私は今回、「働くって楽しい」と思える人を一人でも増やしたいという思いからこのイベントを企画しました。周りから与えられた役割や情報に左右されて自分の可能性を狭めるのではなく、もっと視野を広げて、予想だにしなかったような自分の可能性を見出したり、もっと自由に自分の価値観や直感に従ってキャリアを選択したりしても良いのではないかと思っています。

 何かそういったきっかけになれば良いなという思いで、今日はまず「ポータブルスキル」という考え方について話し、後半ではゲストスピーカーとの座談会を開催します。皆さんにとって「これから」を考えるヒントとなると嬉しいです。さて、皆さんにまずお勧めしたいのは、「働く」際に、自分が大事にしたい項目を意識することです。