「不均衡のない未来」を目指し生まれたプラットフォーム「Ladyknows」をご存じでしょうか。Ladyknowsでは、ジェンダーの問題や社会課題をみんなで考える「場」をメディアやイベントを通して提供しています。キャッチコピーは「自分を知る。女性を知る。社会を知る。」そんなLadyknowsの初回イベントが、2019年7月8日に東京・渋谷で開催されました。2019年4月に始動したプロジェクトの今後の取り組み、そして「育休男子」を招いたQ&Aセッションの様子をリポートします。
株式会社カラス クリエイティブディレクター/Ladyknows代表
カラス代表/エードット取締役/文鳥文庫の店長
不均衡のない未来を目指して
「『女子大生なのにクリエイティブディレクター』って言われることに、違和感を覚えることもありました」
イベントの冒頭でそう語ったのは、カラスでクリエイティブディレクターを務める辻愛沙子さん。辻さんはこれまで、ティーン女性向けの企画を多く手掛けてきました。「『男子大学生』なのにとはあまり聞かないのに、『女子大生』というだけで周囲の捉えられ方が変わることもあると気が付いたんです」(辻さん)
例えば、「○○なのに××」という表現。男性なのに、女性なのに、○○人なのになど、入れる言葉によっては差別になったり侮蔑になったりするが、「若い女性」と言ってしまうと時として褒め言葉として成立してしまうことも。日常生活で抱いてきた違和感がLadyknowsを立ち上げるきっかけになったそう。
女性をテーマにする=新しいビジネスのチャンス
一方、広告代理店のベンチャー・エードットで役員を務める牧野圭太さんは、「Ladyknowsにビジネスチャンスを感じている」と話します。
牧野さんが前職の広告代理店を退職し、会社を作ってから4年がたちました。普段、若い女性社員たちと接する中で、女性は職場や社会でいろんな不均衡を感じているのだと気が付いたと言います。
「今は、SNS上でも特にジェンダーの問題が扱われることが多く、世の中の人もリテラシーが高くなっていると感じます。ただ、こうした問題に取り組める人は恐らくそんなに多くない。エードットのリソースを使えば、何かできるのではないかと考えました。こうしたプラットフォームの運営に男性がいることにも意味があると考えています」(牧野さん)
新しいフェミニズムの形を作りたい
Ladyknowsのサイトには、主に「Data」と「Voice」というコーナーがあります。前者はまさに、客観的な事実や数字を伝える場。例えば、「男女別の健康診断未受診率」や「日本の上場企業における女性役員の割合」、「国別の無痛分娩実施率」などです。インフォグラフィックスやアニメーションを用いて、読み取りづらいグラフを分かりやすく表現しています。
感情論や個人の体験談で語られやすいジェンダーの問題を、数字ベースでフラットに伝えることで、対立構造やバイアスではなく、現状や新しい選択肢を知り、考えるきっかけになればという思いがあるそう。
一方、全く別のアプローチで展開しているのが、「Voice」。仕事や結婚、パートナーのことなどさまざまなトピックについてコラムニストが意見を述べています。
「データで事実を知ることと、よりリアルな声でいろんな生き方や価値観を知ること。どちらも大事にしていきたいという背景には、『正解は1つではない』ということを示したいから。今は、いろんな価値観や正義が複雑に絡み合っているので、あくまで個人が自分の選択肢を尊重できる世の中になればいい。Ladyknowsは悩みを抱えている人がヨコでつながれる、安心できる場にしていきたい。そのためにも、私たちが掲げているキャッチコピー、『You Must Know You.』(あなたを知る)も大切にしてほしいと思っています」(辻さん)
現在は、メディア運営が中心ですが、今後は企業を巻き込んだイベントやプロダクト開発まで、さまざまな事業を展開していくそう。そして、Ladyknowsの最終的な目標は、「教育」にあると言います。
「結局、社会課題を解決する上で大切なのは教育だと思います。今はまだ小さな波にすぎませんが、Ladyknowsはハコであり、ハブであり、プラットフォームであり、ムーブメントにしていきたい。そのために、まずは『デザイン』という武器を使い、これまで社会課題にはあまり使われてこなかったファッション性という違う入口を作ることで、新しいフェミニズムの形を追求していきたいです」(辻さん)