さまざまなパートナーシップのあり方を取材する本連載、第6回は起業家の小林味愛さんと、保育園を運営する企業で働く中西信介さんの夫婦です。2018年末に生まれた長女の環味(たまみ)ちゃんと三人暮らし。取材中も笑顔が絶えない仲のよさですが、夫婦合わせて7回の転職・起業という変化に富んだキャリアです。人生の荒波を越えてきた、パートナーシップの極意とは?

小林味愛(こばやし・みあい)さん・33歳
国家公務員として衆議院調査局、経済産業省などで勤務後、日本総合研究所に転職。地域活性化、地方創生への関心を高める。東日本大震災の経験がきっかけになり、福島県国見町を拠点に「陽と人(ひとびと)」を起業。地域の農産物の価値を広く伝える事業などに取り組む。

中西信介(なかにし・しんすけ)さん・33歳
国家公務員として農林水産省に入省後、4カ月で退職。1年間、豆腐の移動販売のアルバイトを経験し、再び国家公務員に。2014年、都内で複数の認可保育園を運営するナチュラルスマイルジャパン入社。保護者や園、地域をつなぐコミュニティコーディネーターとして働きながら、保育士資格を取得。

結婚前に突然「仕事辞める」宣言

 二人が付き合い始めたのは、互いに国家公務員として働き始める直前のこと。通勤に便利な都内のワンルームのマンションで同居をスタートしました。しかし、官僚としての働き方は当時、入省前の予想を超えるハードなものだったといいます。

 「私はそもそも、器用なタイプではなくて。大学時代までは優秀と言うよりも、『努力型』で乗り切ってきたんです。でも、官僚のキャリアを歩み始めたら、周囲は何でも完璧にできてしまう人ばかり。組織の中で認められようと当時は必死でした。帰宅後や休日などオフの時間も、業務に必要な知識のインプットに当てている状態でしたね。もっと、自分の得意なことで人や社会に貢献できるような仕事があるんじゃないか、と次第に考えるようになりました」(味愛さん)

 「僕は国会対応の担当になり、長時間労働を余儀なくされることに。『国会対応』とは、省庁大臣などが国会で議員からの質問に答弁する際の文案を作る仕事です。大切な業務である一方で、細かい調整や突発的な対応を求められることも多く、連日徹夜で働くこともめずらしくありませんでした」(信介さん)

 現実の働き方と、自身のありたい姿とに隔たりを感じ始めた二人。先に行動したのは信介さんでした。なんと入省してわずか4カ月で退職を決めたのです。

 「彼女とは結婚するつもりでした。だからこそ、向き合う時間が全くない当時の状態を続けていけば、お互いのパートナーシップにとってもよくないと思ったんです」(信介さん)。しかし、味愛さんにそのことを報告したのは職場の上司に退職の意志を伝えた後。味愛さんはどう受け止めたのでしょうか?

「ある日突然、『辞めてきた』って。そりゃあ『マジ?!』ってなりますよ(笑)」(味愛さん)。波乱万丈の二人の軌跡は次ページから!
「ある日突然、『辞めてきた』って。そりゃあ『マジ?!』ってなりますよ(笑)」(味愛さん)。波乱万丈の二人の軌跡は次ページから!