仕事にもプライベートにも全力投球な日経doors読者は、結婚・出産を経ても働き続きたいと考える人が多いのではないでしょうか。多忙な共働き夫婦の、上手なコミュニケーション術とは? さまざまなパートナーシップのあり方を取材する本連載、第1回はシェアハウスに暮らしている松尾真奈さん・力さん夫婦が実践するオリジナルの「会議」について聞きました。

松尾真奈(まつお まな)さん・30歳
農林水産省の官僚としてスマート農業の現場普及に取り組みながら、若手官僚やビジネスパーソンらが集まる早朝勉強会「霞ヶ関ばたけ」の代表を務めている。2017年に男の子を出産。家にいるとあらゆる物を断捨離したくなる衝動にかられるほど、掃除が好き。

松尾 力(まつお りき)さん・31歳
印刷会社でプロジェクトリーダーとして、新規事業開発やマーケティング、システム構築などのプロジェクトを進めている。転職前は経済産業省に勤めていた。料理が得意で、週末に「おうちバル」を開き料理を振る舞うのが趣味。

友人たちが気軽に出入りできる家庭を築きたかった

 2人の出会いは20歳のときでした。偶然同じタイミングで京都大学からイギリスに留学することになり、その縁で付き合うことに。卒業後は2人そろって官庁への入省が決まり、真奈さんは上京、力さんは上京後、出向で福島県での生活が始まったそうです。

 当時真奈さんは高校時代の友人2人とシェアハウスに住んでいて、力さんは東京出張のたびにその家を訪れていました。部屋の壁は薄く、洗面所もトイレもお風呂も共有。それでも2人は、友人とともに暮らすにぎやかな空間が好きだったそうです。特に力さんは、「結婚しても夫婦2人だけの閉じた世界にはしたくない」という思いがありました。

 「25歳で結婚した後は、都心で約2年間、夫婦2人で生活していました。自然な流れでそうなったんですが、いわゆる『愛の巣』みたいな場所にはしたくなくて(笑)。例えば遠方の友人が出張で東京に来たとき、気軽に食事に呼んで『最近どう?』って話せる家にしたかったんです」(力さん)

 「結婚した途端に『新婚家庭にお邪魔するのはよくないよね』っていう空気が漂って、友達が家に来なくなることってあるじゃないですか。それに違和感があったんです。結婚後も友達が気軽に泊まりに来てくれる家にしようという会話から、シェアハウスに住む案が出てきました」(真奈さん)

シェアハウスで大人4人+子ども1人で暮らす

 2人の価値観の原点には、イギリス留学中の経験が。コーヒーや紅茶を飲みながら、議論や会話を楽しむ「サロン」の文化に刺激を受けたそうです。イギリスの大学生がカフェで選挙戦を見ながら気軽に意見交換しているのを見て、その頃から「サロンのような開かれた場所っていいよね」という理想を共有していたのだとか。

 そして結婚から約2年後、友人夫婦とともにシェアハウスでの生活を開始。息子が生まれ、メンバーの入れ替わりを経て、現在は大人4人+子ども1人で共同生活を送っています。

 「息子が生まれた直後は、困ったときにシェアメイトが声をかけてくれて何度も救われました。ときには物音で息子が起きてしまうこともありましたが、助かることのほうが断然多いですね。もうシェアハウスのない子育ては考えられません」(真奈さん)

 「保育園への送り迎えを交代でしているので、曜日によっては夫婦どちらかがワンオペで息子と過ごす日もあります。そんなとき、誰かが近くにいてくれるだけで心が救われますね。シェアメイトは友達というより、家族に近い存在です」(力さん)

 周囲の助けはあるとはいえ、松尾夫婦はともにフルタイム勤務。コミュニケーションを円滑にするために、独自の「会議」を実践しているといいます。いつ、どんな内容を、どのように話し合うのか。次ページから、その具体的な方法を紹介します。

ユニークな夫婦会議は「ウィークリーセッション」「クオーターセッション」の2種類。具体的にどんなことを実践しているの?
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