「ミーハーな気持ち」で始めたはずのボクシング

 学生時代には硬式テニス、医師になってからはベリーダンスやゴルフと、運動には積極的に取り組んでいた高橋さん。しかし病院での当直勤務が多い時期には継続が難しくなったり、不規則な生活とストレスで急激に体重が増えてしまったりしたこともあるそうです。そんな自分と決別するためにボクシングを始めたのかと思いきや……。きっかけは「ミーハーな気持ち」だったのだとか。

 「友人から招待を受けてボクシングの試合を観戦。そこに出場していた元世界王者の内山高志選手がとてもかっこよくて、戦っている姿に感動しました。『内山選手と同じジムに通いたい!』と追っかけ感覚で始めたので、最初はフィットネスとして通っていました」

 しかし、ボクシングの面白さにのめり込んでいった高橋さんは、次第にフィットネスだけでは物足りなさを感じるように。「同じ時間を使って練習するからには、結果が欲しい」とプロライセンスへの挑戦を決断しました。

 そのことを周囲に話すと応援の声はあまりなく、返ってきたのは後ろ向きな意見ばかり。ボクシングという危険なスポーツに挑む高橋さんを心配するが故に「今さらプロなんて無謀でしょう」「運動神経、そんなに良くないよね?」などと口々に言われたそうです。しかし高橋さんはそこで諦めるのではなく、かえってやる気スイッチがオンに。

 「理由は分からないのですが、『できるはずがない』と思われていればいるほどエンジンがかかってしまう性格みたいです。高校時代にも『医学部に進学したい』と担任教師に話したら『現役では無理。浪人することを前提に』と言われ、そこから猛勉強して現役合格。自分の限界を決めつけてくるネガティブな言葉は、だからこそ成し遂げてやるんだという強い気持ちに変換するようにしています」

 目標が定まるとまっすぐに向かっていくタイプの高橋さんは宣言通りプロテストに合格。医師兼プロボクサーとして歩み始めたのです。

試合中の高橋さん。相手に向かっていく強い表情が印象的(高橋さん提供)
試合中の高橋さん。相手に向かっていく強い表情が印象的(高橋さん提供)