労働力としての女性
しばしば指摘されたのは、女性活躍が経済成長の手段としてみなされることの問題でした。少子高齢化が進むことで労働人口の減少が続く中、これまで家庭にいた女性たちに働いてもらおうという政権の思惑に、批判的な声は少なくありません。
これまで働く機会が少なかった女性に新たなチャンスが増えることは望ましく、雇用や賃金は重要な問題です。しかしながら、そこにはさまざまな問題がついて回ります。
分かりやすい問題は、非正規雇用労働者の増加です。2019年における非正規雇用労働者の割合は、男性が22.8%であるのに対して、女性は56.0%となりました。※4
これは安倍政権が成立した2012年の54.5%からも増加しており、1985年の32.1%からは大きく上昇しています。※5 非正規雇用は、正規雇用に比べて不安定な雇用形態であり、貧困や格差拡大、セーフティーネットの欠如などさまざまな問題を抱えています。
経済成長のために多くの女性を労働市場に押し込めても、その立場が弱いままであれば、本当に女性が活躍しているとは言い難いでしょう。実際、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大によって経済に大きな打撃が生じましたが、「雇用の調整弁となりがちな非正規雇用者の過半を占める女性の立場の弱さが浮き彫りになった」ことが指摘※6されています。※4、5、6は記事末を参照