女性活躍には女性の権利の尊重、ジェンダー平等が前提

 政府のキャッチコピーには「すべての女性が輝く社会づくり」が掲げられています。女性が輝くために雇用が生まれることも重要ですが、女性の権利が尊重されることは大前提です。その意味では、安倍政権の女性に関する政策は決して十分とは言えないでしょう。

 女性に関する政策について評価が分かれる背景としては、保守政権としての特徴が挙げられます。自民党の中には、「女性は家庭に入って夫を支えるべきだ」という「日本の伝統的な家族像」といわれる考え方を重視する議員が少なくありません。安倍政権は、「保守派による家族の論理と折り合いをつけつつ、政権はあくまで経済政策として、女性の労働力供給増を目指して」※7きました。

 このジレンマについては、例えば配偶者控除の見直しが、女性の社会進出にとって重要でありながらも、伝統的な家族像を破壊するのではないかと考える保守派議員からの懸念もあり、十分に踏み込めていないことなどに表れています。

 次の政権は、こうしたジレンマを乗り越えつつ、雇用問題だけではなく、女性の人権やジェンダー平等の問題に取り組む必要があるでしょう。「すべての女性が輝く社会づくり」を実現するためには、リーダーシップや人権など、経済成長の手段としてではないアプローチも重要になってくるはずです。

文/石田健 代表撮影/ロイター/アフロ(安倍首相) 石田さん写真/本人提供

【参考】

※1 日本経済新聞 女性就業者、初の3000万人突破 6月労働力調査
※2 内閣府男女共同参画局 政策・方針決定過程への女性の参画
※3 内閣府男女共同参画局 資料1 女性活躍加速のための重点方針2018策定に向けて
※4 内閣府男女共同参画局 政策・方針決定過程への女性の参画
※5 内閣府男女共同参画局 第1節 就業者をめぐる状況
※6 Bloomberg コロナ禍で消えた非正規の女性雇用、アベノミクスの成果ご破算に
※7 SYNODOS 成長戦略としての「女性」―安倍政権の女性政策を読み解く 堀江孝司

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