マスコミは社会問題について質問をし続けてほしい

岸田文雄氏の出馬会見にて
岸田文雄氏の出馬会見にて

 政治家の意識を変えるためにも、対峙するのではなく、このように気づいてもらうために、「たくさんの質問を続ける」「諦めない」ことが大事ではないかと思った。

 新聞やテレビの政治部の記者が多く、仕方のないことかもしれないが、「社会問題を取材した現場から見えた質問」が少ないように感じた。「現場では、このような問題がある。それをあなたなら、どう変えるか」――。有権者がマスコミに求めることはそういうことではないだろうか。

 マスコミが社会問題の現場を取材していないかといえば、決してそんなことはない。それはただ、セクショナリズムの問題だ。問題意識を持つ記者は、会見に来て質問をしてほしいと思った。女性記者がたくさん来て、女性活躍にまつわる質問をたくさんして、意識や文化が変わればいい

国際的に遅れる女性活躍

 今回の総裁選の候補者に女性議員はいない。結党から65年、総裁選に女性が立候補したのは過去に一度しかない。2008年に立候補した現在の東京都知事の小池百合子氏だけだ。積極的だった稲田朋美氏、野田聖子氏も、今回は立候補できず。65年で1人しかいないのは、問題だろう。

 14日の総裁選後、会場から出てきた稲田氏は、「女性のいない民主主義と言われる日本において、内閣や党の役員においても女性の起用をしてほしい」、総裁選の意欲については「課題も分かったので挑戦したい。今日から頑張りたい」と話していた。

 日本の国会議員のうち女性は約1割で、これは193カ国中166位である(2020年3月)。SDGs(持続可能な開発目標)で、17の目標の一つに掲げられている「ジェンダー平等を実現しよう」。日本は国際的にも遅れている。先進国で、この項目が遅れている国は珍しい。2003年に政府が「2020年に国会議員や企業の経営層などの指導的地位の女性の割合を3割にする」と掲げていたが、今年7月、安倍政権は断念した。

女性を打席に立たせるべきだ

 ちなみに、9月9日、自民党本部で党青年局と女性局主催の討論会に総裁選の3候補が出席した。主催が女性局ということで、女性に関する問題の質問が相次いだ。石破氏は「夫婦で家事分担」を、菅氏は「待機児童に終止符を打つこと」「不妊治療の保険適応」にも言及。岸田氏は「出産費実質ゼロ」を訴えた。こうした場があることは、非常に良いと思う。

 9月14日、菅義偉氏が総裁に決定した。他の二人が総裁になっていたとしても、「ここで問われたことについて、社会は問題意識があるのだ」ということを、彼らには覚えておいてほしい。

 私は、女芸人としてマッチョな男社会で生きる中で、「女だからバカにされてはいけない」などと、気づけば男化していた。

 しかし、最近考えが変わった。ここまで、女性や若者が政治の世界から取りこぼされる中で、必要以上に声をあげないといけない。極端なフェミニストの人に嫌悪感を抱く自分もいるのだが、だから口を閉ざして現状がこのままでいい訳ではあるまい。

 女性議員が女性の問題を語ると、「女性であることを訴えすぎ」「特別視しすぎ」「男性と同じ能力を」という批判がすぐにくる。しかし、ジェンダー平等がここまで遅れる国においては、無理やりにでも女性に打席に立ってもらい、女性目線の政策をどんどん実現することが必要だろう。

 自民党の総裁選で、なぜ女性候補者が過去に1人しかいないのか。女性総裁が誕生せずとも、ここに女性がいたら、候補者の議論はどう変わったのか、女性の視点や問題が活性化したのか。あの3候補の並びを見たら、どうしても考えてしまう。

 今後、女性の候補者が出たら「無条件にでも応援すべきではないか」とさえ、今の私は考えている。女性に生まれたことを後悔してほしくないし、女性だからとキャリアを諦めてほしくない。そんな社会にしているのは、政治であり、本気で変えようとしないマスコミであり、女性候補者を応援できずにいるわれわれ有権者であるのかもしれない。

文・写真/たかまつなな 代表撮影/ロイター/アフロ(自民党総裁選の写真)