マスク2枚、突然の休校、必要な情報と説明が欲しい

―― 日本と比べて、海外ではリーダーが市民と対話する場面も目にしますよね。

能條 そうですね。コロナ禍の折、ニュージーランドのアーダーン首相は、自宅からFacebookライブを使って新型コロナウイルス対策について説明し、視聴者からの質問にも答えていましたよね。私が留学していたデンマークでもメッテ・フレデリクセン首相が若者に向けてメッセージ動画を配信しました。

 一方、日本では突然マスクが2枚配られて、なぜ2枚なのか、という理由も明確ではなかったですよね。学校が休校になったときも、ある日突然発表になり、そのプロセスについての説明がなかった。大学は今もオンライン授業を強いられています。なぜ、小学校、中学校、高校は通うことができて、大学だけがオンラインなのか、そういった細かな点についても政権から発信があればと思います

 安倍首相の発信で印象的なのが、ミュージシャン星野源さんの「うちで踊ろう」という曲とコラボして、自宅のソファで愛犬とくつろぐ動画の投稿ですよね。これは、多くの人から批判を浴びましたが、国民が求めているのはそんな情報ではなかったということです。人々の声が届いていないからこういうことがおきてしまうのかなと思います。

 声が届いていないという面では、野党との分断も気になります。今、自民党が3分の2の議席を持っているからか、野党の意見を聞く土壌すらないような気がしています。野党の存在意義を与党はどう考えているかが知りたいです。議会の3分の1は違う意見があるということなのでそこにもぜひ耳を傾けてほしい。

 多くの声が届いていないので、日本では多様な考えが生まれにくい。多様性という面でも世界からさらに後れを取ったと思っています。