男性ばかりの格闘ゲームの世界で、プロゲーマーとして活躍している女性がいます。「たぬかな」さんは、eスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming」に所属するプロゲーマーの一人。「女性だからこそ生半可な実力ではダメ」と語る彼女に、なぜプロゲーマーの道を選んだのか、これからを伺いました。

2022年アジア競技大会でeスポーツが正式種目に採用

 「eスポーツ」という競技をご存知でしょうか。eスポーツは、「Electronic Sports」の略で、ビデオゲームやコンピュータゲームを使った対戦競技のことです。eスポーツの大会は国内、海外で盛大に開催されており、国内では2018年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされるなど、いまもっとも注目されているジャンルのひとつです。2022年アジア競技大会では陸上競技や競泳などと同様に、スポーツのジャンルとしてeスポーツが正式種目に採用されることも決まっています。

 eスポーツの大会には、プロ・アマチュア問わず出場することができます。「プロ?」と思った人もいるでしょう。ゲーマーにはプロとして活躍している人たちがいるのです。ゲーマーにスポンサーが付くと、一般のスポーツ選手同様にスポンサー料がもらえるようになり、スポンサー名が付いたユニフォームをゲーム大会やイベントで着ることで収入を得ます。また、「Fortnite World Cup」という世界大会では賞金総額3000万ドル(約32億6000万円)も設定されるほどで、試合に勝つことでも報酬を得られます。

就職した会社が倒産!仕事とゲーセン通いの日々

 たぬかなさんは現在26歳。プロゲーマーとしてeスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming」に所属、バンダイナムコ「鉄拳」シリーズのゲームが専門です。ゲーム好きな父親のもとに育ち、映画を観ているような気分でカプコン「バイオハザード」のプレイを眺めていたことがゲームとの出会いでした。

 「鉄拳を知ったのは高校生のときでした。工業高校の建築学科に通っていたのですが、同級生はほとんど男子だったので学校帰りにゲームセンター(以下、ゲーセン)に寄るんですね。そこで、みんながやっているからと始めたことがきっかけです」

 その後、たぬかなさんは設計事務所に就職します。

「その会社が非常にブラックで(笑)、朝から晩まで働いてとてもつらかったのですが、帰りにゲーセンに行くことでストレス解消していました。当時はオンラインゲームだとネット回線が遅かったので、0.1秒を争う格闘ゲームには厳しかったんですね。そこで、オフラインで戦えるゲーセンに通っていました。そんなある日、勤務先の社長の水増し請求が発覚して、突然職を失ったんです