「こうあるべき」が原動力になる「凝縮性」
まず「凝縮性」の高い人はこだわりが強く、「こうあるべき」という価値観を持ちやすいのが特徴です。
例えば、「世の中はこうあらねばならない」と信じている人が、そうではない現状を理解すると、「世の中を正すこと」が自分に課せられた使命だと思う傾向があります。そのため、社会的あるいは文化的な課題解決を自分の「すべきこと」に設定しやすいのです。教育現場の荒廃、インフラの不整備、環境の悪化や温暖化、貧困、難民などに対する問題意識を持ち、解決しようと動きます。
この連載企画のプロデューサーであるコルクの佐渡島庸平さんは、「凝縮性」が第一因子(5つの因子のうち、最も数値が高いのが凝縮性)です。彼には漫画に関して明確なビジョンがあります。漫画はサブカルチャーではなく、文学としての地位を獲得すべきと考え、「漫画でノーベル文学賞を受賞」をもくろんでいます。
「拡散性」の高い人は、基本的に「面白いことをしたい」という気持ちが強く、自分の興味で動きます。「ワクワクしたい」という気持ちが、その人を突き動かすのです。
最初は自分軸ですが、「誰もなし得ないことを実現したい」「オンリーワンでありたい」と動いていくうちに、他人軸へと変わっていきます。
例えば、ある社会問題に対して、「困っている人がいるのに、誰も救わないの?」と疑問に思えば、「私が救いたい」と考えます。そして、課題解決を成し遂げた場面を思い浮かべてワクワクするのです。そのため、周囲から見ると「すごいことを考えるんだな」と思うようなことを平気で語れるのです。本人に気負いはまったくありません。
私の後輩の教え子で「拡散性」が第一因子の西側愛弓さん(25歳の女性)がいます。彼女は、学生時代に旅行で訪れたフィリピンで貧困層の子どもたちを見て、「彼女たちに夢を持ってもらうために何かしたい」と強く思ったと言います。それで、子どもたちのためのファッションショーを企画・実施しました。
さらに、「単発のイベントでは本質的な解決にはならない」と考え、継続的な取り組みにするため、会社を辞めて単身でフィリピンに乗り込んだのです。現在は、ファッションスクールの設立のための準備にまい進しています。
実は、彼女は、英語をほとんど話せません。
しかし、彼女が夢を実現するうえで、そんなことは障壁にならなかったようです。
「誰かのため」に人生を懸けられるのが「受容性」
さて、「受容性」の高い人はどうなのか。
「凝縮性」が高い人のようなこだわりの強さは持ち合わせていません。また、「拡散性」の高い人のように、湧き上がる興味から突き進むことも少ないでしょう。
その代わり、「人の喜びが自分の喜び」と感じる性質ですから、身近な誰かのために人生を懸けることができます。これは「受容性」の大きな強みです。