女性が主体的にできる避妊の方法のひとつとして知られているピル。その効用は、避妊以外にもあるということを知っていますか? 生理や子宮・卵巣機能にトラブルを抱えるときや、体のメンテナンスとしても有効だと語るのは、産婦人科医の高橋怜奈さん。今回は、低用量ピルのメカニズムや、メリット・デメリットについて、高橋さんに教えてもらいました。

ピルは妊娠時と同じような状態を作る

 ピルの正式名称は「経口避妊薬」。OC(Oral Contraceptive)とも呼ばれます。

 「ピルの主な成分は、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)。この2つの成分が脳下垂体に働きかけ、妊娠しているのと同じような状態を作ります。卵胞を成熟させるホルモンを分泌させて排卵を抑えることで妊娠を防ぐというメカニズムです。また、子宮頸管(けいかん)粘液の性質が変化することで、精子が子宮の中に流れづらくなることによる避妊効果もあります。ピルに含まれる卵胞ホルモンの含有量によって超低用量・低用量・中用量・高用量と4種に分かれ、現在では薬量を必要最小限に抑えた超低用量ピル、低用量ピルが主流となっています」と高橋さんは説明します。

 複数の製薬会社が製造していて種類もさまざま。製品によって飲み方や成分の配合も違います。比較的種類が多いのが、3週間服用し、残りの1週間に何の成分も含まれないプラセボ薬(偽薬)を服用する、もしくは休薬するという「28日周期タイプ」(下図参照)。プラセボ薬を飲む、もしくは休薬する週に、排卵による生理とは異なる「消退出血」(ホルモンの減少により内膜がはがれて出血すること)が起こります。このほか、最近では休薬せずに長期間飲み続けて生理の回数を減らすタイプのピルもあります。

 避妊以外にも、女性の体をメンテナンスしたり、不調を整えたりするメリットもあります。「ピルは子宮内膜を薄くする作用があるので、生理ではがれ落ちる部分が減るため、生理の量を少なくできますし、それによって生理痛も軽減できます。休薬中の消退出血は通常の生理より軽く、生理痛や月経過多を軽減させる効果もあります」と高橋さん。さらに、子宮内膜症進行の予防、卵巣がんや大腸がんにかかりにくくなるなど、病気のリスクを軽減する作用もあるそう。

 また、生理前後のホルモンバランスの乱れを整える作用も。「生理前の気分の落ち込み、イライラなど、心と体に不調をきたすPMS(月経前症候群)や、ホルモンバランスの崩れによる肌荒れの改善にもつながります」と高橋さんは言います。