女性が自分の体をメンテナンスするための選択肢の一つが、「子宮内黄体ホルモン放出システム(Intrauterine System=IUS)」です。商品名は「ミレーナ52mg」。この装置は女性の子宮内に装着して使用します。女性特有の病気の治療に用いられることもあり、生理がつらい女性の負担軽減や避妊にも効果があるそう。どうやってつけるの? どれくらいの期間入れていていいの? こうした気になる疑問に、産婦人科医の高橋怜奈さんが答えてくれました。

低用量ピルを飲まなくても生理の負担を軽減できる方法

 毎日、低用量ピルを飲まなくても、生理の負担軽減(月経の短期化、経血の減少、下腹部の痛みの軽減など)や避妊ができる体のメンテナンス方法があることを知っていますか? 子宮の中に装着することで低用量ピルに近い作用が期待できるのが、「子宮内黄体ホルモン放出システム」と呼ばれる、長さと幅が約3cmの薄い小さな器具。製薬会社が扱っている商品の名前は「ミレーナ52mg」。2007年に避妊薬として国内で承認されています。

子宮内黄体ホルモン放出システム(Intrauterine System=IUS)の写真。長さ、幅ともに約3cm。「ミレーナ52mg」は商品名
子宮内黄体ホルモン放出システム(Intrauterine System=IUS)の写真。長さ、幅ともに約3cm。「ミレーナ52mg」は商品名

 医療用医薬品であるため、一般に購入できるものではなく、医療機関で装着・交換・除去する製品です。月経困難症などの治療目的で使用する場合には保険が適用されます。このミレーナの使用効果と使うメリットについて、産婦人科医の高橋怜奈さんはこう話します。

 「ミレーナは、子宮内で持続的に黄体ホルモンを放出し続けることで、子宮内膜の増殖を抑えます。低用量ピルと同じように、子宮内膜を薄くして経血量を減らすため、月経困難症や月経過多の軽減に効果があります」。子宮内膜の増殖を抑えるため、子宮内膜症の症状緩和の治療にも使われているそうです。ミレーナを装着してしばらくは不正出血があることが多いですが、いずれ出血自体がなくなる場合があるため、かなり快適になる人が多いそうです。

 また、ミレーナは低用量ピルと同様に避妊効果も期待できます。子宮内膜の増殖を抑えるため内膜が薄くなり、受精卵が着床しづらくなります。さらに、子宮の入り口の粘液が変化するため、精子が子宮内に入りにくくなる作用も。

 高橋さんは、ミレーナには低用量ピルにはないメリットもあると言います。「低用量ピルはエストロゲンが含まれているため血栓症のリスクがありますが、ミレーナにはエストロゲンは含まれておらず黄体ホルモンのみなので、血栓のリスクが上がりません。タバコを多く吸うなど、低用量ピルでは禁忌や慎重投与と判断されて服用を控えていた人でも、ミレーナなら使用できることも多いです」