社会から押し付けられる美の基準から自由になり、ありのままの自分の体を愛そうという「ボディポジティブ」のムーブメントが今、世界中で広がっています。皆さんは、自分の体について考えたことはありますか。「痩せたい」と思う? 憧れるのは、どんな体? 何より、「私の体は私のものだ」という実感を持つことはできていますか。プラスサイズモデルの吉野なおさんと一緒に考えます。

 摂食障害に苦しんだ経験から立ち直り、プラスサイズモデルとして発信を続けている吉野なおさん。連載最終回は、ボディポジティブに付きまとう「誤解」を取り上げます。

ボディポジティブは言い訳?

 先日「ボディポジティブ」についてネット検索しようとしたところ、「ボディポジティブ 言い訳」という言葉が検索予測候補として出てきました。「ふくよかな体形を肯定させるための言い訳」として捉えてしまう人がいるようなのです。

 ボディポジティブは、これまでネガティブなイメージで捉えられてきたプラスサイズの女性たちが共感しSNSなどで発信したことで、大きなムーブメントになりました。しかしこれは「太っていることが唯一すばらしい!」ということではなく、「世の中には、さまざまな体を持つ人が存在し、否定されるべき人間はいない」というエンパワーメントを意味しています。

 一般的な定義は「ありのままの体を受け入れ、愛すること」ですが、その真意は「自己卑下をやめ、自尊心を取り戻し、自分自身の体を大切にすること」です。決して「言い訳」ではありませんし、どんな人も使える言葉です。

 体形に限らず、肌の色、肌質、髪質など、人の特徴はさまざま。痩せていることは憧れの対象になりやすいですが、他人からはスリムに見えても「自分の体に自信がない」という人も実はいます。そんな人にとっても、ボディポジティブというマインドは生きやすさを得る方法の1つになるのではないでしょうか。

 ボディポジティブを「言い訳」として誤った使い方をするというのは、例えば「私はボディポジティブを支持するから、太るために毎日暴飲暴食をします!」というもの。暴飲暴食は、「太る/太らない」という問題以前に、体に負担をかけ、誰にとっても推奨されるものではありません。自分の体を大切にするはずのボディポジティブとは正反対の行動になってしまいます。