「モラハラ彼氏」に苦しんだ理由

 過食の症状自体もつらかったのですが、彼に「過食症とか甘えでしょ?」「意思が弱い」「だからお前はダメなんだよ、ほんとあきれる」などとまくしたてられ、全く理解してもらえなかったことも、事態のさらなる悪化を招いていきました。

 こんなふうに「彼に愛されるために始めたダイエット」がきっかけで、私は摂食障害に悩まされながら生きることになったのです。

 今の私なら、Aさんの言動は明らかなモラルハラスメントだと理解できます。でも、今まさに交際相手にダイエットを強要されていたり、体形のことをいじられて内心悲しい思いをしていたりする女性は多いのではないでしょうか。

 「愛されたい」という思いは、とても切実です。冒頭で「ネット上ではうまくいっていたのに、会った途端に相手の態度が冷たくなってしまった」という経験について話しましたが、当時は「ありのままの自分なんて受け入れられない」と考えていたからこそ、「写真が見たい」などと言われても、自分が現実以上によく映っている写真(いわゆる「詐欺写メ」)だけを送るようにしていました。

 「愛せる女性かどうか」を見た目で判断するのをやめてほしいという気持ちは、もちろんあります。ただ同時に、「イメージとあまりにも違う」と相手に驚かれてしまうことが多かった一因には、私自身が「ありのままの自分」を否定して、隠してしまっていたこともあると思います。悲しいことに、社会のルッキズムをいつのまにか内面化し過ぎて、結果的に自分のほうから壁をつくっていました。

 「愛されたい」という思いをこじらせてしまった私が、その後どうやって、自分の体を愛せるようになったのか。次回の記事でお話ししていきます。

文/吉野なお 編集/加藤藍子(日経doors編集部)