社会から押し付けられる美の基準から自由になり、ありのままの自分の体を愛そうという「ボディ・ポジティブ」のムーブメントが今、世界中で広がっています。皆さんは、自分の体について考えたことはありますか。「痩せたい」と思う? 憧れるのは、どんな体? 何より、「私の体は私のものだ」という実感を持つことはできていますか。プラスサイズモデルの吉野なおさんと一緒に考えていきましょう。

 ふくよかな体を否定され続けることで傷つきながらも、同時にその社会からのまなざしを内面化していくことになった吉野なおさん(前回記事「女性は『痩せていること』が大前提? 吉野なおが抱く疑問」)。摂食障害にまで追い込まれる、引き金になったものとは――。

手に入りにくいように感じた「かわいらしさ」

 周囲からの心ない声、マスメディアの影響、洋服のサイズ問題。幼少期から「自分の体に対する否定の経験」を重ねていた私が思春期に特に悩むようになったもの。それが「恋愛」でした。

 身近にいた友だちは学校や人づての紹介などで自然と恋人ができ、別れてもまた新しい恋人がすぐにできるような状況で、彼女たちは私にないような「女性らしさ」や「かわいらしさ」を自然に持っているように見えました。憧れると同時に、自分にとっては諦めを感じていたものだから「ずるいな」という気持ちもあったと思います。かといって、性格や内面を見て私を気に入ってくれる人と、果たして出会えるのか――かなり不安でもありました。

 そのころの私は、共通の趣味で盛り上がれる友だちをネット上でつくって皆でチャットしたり、一緒にイベントに行ったりすることが日々の楽しみでした。ネット上でのやりとりは、初めから容姿をさらす必要がないので、気軽で楽しかったんです。見た目へのコンプレックスがある現実の自分から、解放される居場所でした。