産婦人科医の池田裕美枝先生と、日経クロスウーマンアンバサダーの印南留美さん、南部成美さんが、生理と生理痛についてオンラインでトークしました。二人からは自分の体験も含め、これまで聞きづらかった素朴な疑問も飛び出し、池田先生が率直にお答えくださいました。「私の生理、大丈夫かな?」と不安に思っている方は特に必見です。
(記事中で紹介する治療は個人の体験で、治療効果には個人差があります)

1回目 SHELLYさん×甲賀先生 生理痛の上手なマネジメント法
2回目 薬を使わず生理痛を軽くするには?14の質問に回答
3回目 サッカー選手、川澄奈穂美さんが語る生理のこと
4回目 10代の娘が生理で困ったら、親としてどうする?
5回目 読者が婦人科医と生理痛をぶっちゃけトーク! ←今回はここ
6回目 あの人に聞く、つらい生理のマネジメント体験(予定)

――お二人は生理痛に悩んだ経験があると聞きました。どんな様子でしたか?

眠れないほどの痛み。でも「休む自分が弱い」と思っていた

クロスウーマンアンバサダー 印南留美(いんなみ るみ)さん
クロスウーマンアンバサダー 印南留美(いんなみ るみ)さん
40歳 既婚。子どもなし。客室乗務員を経て、現在は司会業。

印南さん 高校生になってから生理2日目の出血が多くて、夜用ナプキンを2枚重ねてもギリギリで、夜も眠れないほどでした。20歳のころからは、つらくて立っていられないほどの生理痛と過多月経でレバーのようなかたまりが出ることも。親にも話せず悩んでいたところ、産婦人科に入院した先輩のお見舞いに行ったのをきっかけに私も産婦人科を受診。そこで、子宮内膜症と診断されました。漢方薬を処方されましたが、生理痛にはあまり効かず…。結局、痛みを抱えたまま大学に通っていましたが、トイレに頻繁に行くようになったので漢方薬のせいかなと思って薬をやめてしまい、婦人科も疎遠になって…。その後は、市販の鎮痛剤でしのいでいました。

クロスウーマンアンバサダー 南部成美(なんぶ なるみ)さん
クロスウーマンアンバサダー 南部成美(なんぶ なるみ)さん
37歳 独身。子ども2人(10歳男の子と5歳の女の子)。行政書士(起業支援専門)。

南部さん 初潮が始まった中学生のころから、生理1週間前から始まるPMSの頭痛、めまい、眠気、腹痛、気持ちの不安定さがあり、生理が始まると今度は、生理痛がひどくて。月のうち3分の1は不快症状に悩まされていました。生理中は鎮痛剤をのまないと眠れないほどで、高校と大学受験の時期は、生理が受験日と重なりませんように…と願うしかなく、心配ばかりしていました。体育の授業も、つらいのに先生には言えず、無理して出ていたのを思い出します。社会人になると、両方の症状はますますひどくなりました。痛みで一睡もできず、出社できない日もあり、男性の上司に「生理休暇」の承認をもらう勇気がなく、有給を使っていました。生理痛があるのは当たり前で「休む自分が弱い、悪い」と思っていました。鎮痛剤を使ったり、食生活も見直したりしましたが、大きくは改善しませんでした。

――池田先生、当時のお二人の様子を聞いてみて、いかがですか?

低用量ピルがまだ使えなかった時代。つらかったですね

お話を伺った<br>池田裕美枝(いけだ ゆみえ)さん<br>京都大学医学部附属病院産科婦人科 産婦人科医
お話を伺った
池田裕美枝(いけだ ゆみえ)さん
京都大学医学部附属病院産科婦人科 産婦人科医
京都大学医学部卒業。市立舞鶴市民病院、洛和会音羽病院にて総合内科研修後、産婦人科に転向。現在、京都大学医学部附属病院の女性ヘルスケア外来ほかを担当しつつ、同大学大学院博士課程にて、女性の社会的孤立や月経前症候群による社会的インパクトなどを研究。NPO法人女性医療ネットワーク副理事長。京都大学リプロダクティブヘルス&ライツライトユニット代表。ソーシャルワークプラットフォームKYOTO SCOPE事務局代表。既婚。子どもあり。

池田先生 生理痛(月経困難症)には鎮痛薬や漢方薬、エストロゲン・プロゲスチン配合薬の低用量ピル(LEP)※1などが有効なのですが、おふたりが苦しんでいたころは、まだ日本で低用量ピル(LEP)が使えるか使えないかの過渡期だったと思います。産婦人科医の中でも低用量のホルモン製剤への認知が十分に進んでいなかった時期でしょう。中学、高校と生理痛に耐えていたお話を聞くと、医師としてつらい気持ちになります。

 青春真っただ中の頃や、20代のキャリア形成期は、元気でいるほど、たくさんの経験が積めて楽しめるいい時代。それなのに、人に相談できず、情報もなく、痛みの対策ができないのは、つらい時代でしたね。今以上に、生理のことを人に話しづらい社会環境でもあったと思います。今は月経困難症には低用量ピル(LEP)という治療薬があるから、なおさら当時の状況をつらく感じます。

※1:日本で処方されている低用量ピルは、経口避妊薬であるOC(Oral contraceptive)と、「月経困難症(日常生活に支障が出るほどつらい生理痛)」の治療薬として保険適応があるLEP(Low dose estrogen progestin)剤の2種類があります。